巨人ファンも「思った以上に凄かった」 東京Dで開催された“女子のセンバツ”の熱

初優勝を飾った福井工大福井【写真:川村虎大】

福井工大福井の東主将「女子野球も面白いと思えるプレーがしたかった」

時には笑顔を見せ、点数が入れば飛び跳ねて喜びを露わにする。東京ドームには金属バットの乾いた音が響き、普段とは違う光景が広がった。第23回全国高校女子硬式野球選抜大会の決勝戦が3日に行われ、福井工大福井が延長タイブレークの末、神戸弘陵(兵庫)を2-1で下して初優勝を果たした。昨夏の甲子園に続くプロ野球の本拠地球場での開催。女子野球の熱は確かに高まってきている。

福井工大福井の守備力が光った。「守備から試合を作る」をテーマに掲げ、この試合もエラーなし。3回には、一塁を守っていた小林愛海内野手が、一塁観客席に飛び込むダイビングキャッチで流れをもたらし、次の4回にすぐさま先制点を挙げた。

小林は試合後、「今になって(ぶつけた)頭が痛くなってきました」とおどけながらも、「自分は一塁手なので、みんなの送球を捕ることだけ。この時も捕ることはしっかりしよう」とプレーを振り返った。

史上初めて東京ドームで開催された今大会。普段のプロ野球と同様に、リニューアルされた大画面のバックスクリーンに顔写真が映し出され、選手1人1人がアナウンスで紹介されながら入場した。普段とは違う場面に「こんな素晴らしい球場で野球ができるなんて思ってもみなかった。とても幸せです」と小林は続けた。

主将の東ここあ内野手が東京ドームを訪れたのはこれが初めて。「想像より広くて。これが東京ドームなんだって思いました。自分たちは、この日のためにたくさんの我慢をしてきた。結果につながってよかったです」と笑顔だった。

この試合はデーゲームで行われた巨人-阪神戦後に開催され、そのままスタンドに残って観戦したファンも多かった。「初の有観客でこんなにも見てくれる人がいる中でできてとても楽しかった。女子野球も面白いと思ってもらえるようなプレーがしたかった」と東。有観客での開催は、女子野球の今後を左右すると選手たちも感じていた。

ハイレベルなプレーに球場は沸き、試合後には巨人のユニホームを着たファンが「思った以上に凄かった」と満足そうに帰る姿もあった。昨夏の甲子園、そして東京ドームと、少しずつ盛り上がりを見せている。そして、その熱を絶やさないと選手たちが戦う姿は、観客にも確実に伝わっていた。(川村虎大 / Kodai Kawamura)

© 株式会社Creative2