野球は「生涯楽しめる」 未経験だった50代女性が“心奪われた”競技の魅力

フューチャーズ・レディースの大石節子さん【写真:間淳】

「年齢なりのプレーをできるのが野球の良さ」

常識にとらわれてしまえば人生の楽しみを失うということだろうか。静岡市の女子軟式野球チーム「フューチャーズ・レディース」には、50代女性が3人所属している。チーム加入は中学生以上であれば年齢も経験も不問。野球未経験ながら昨年入団した51歳の女性は「野球は年齢に応じた楽しみ方がある」と強調する。

【実際の動画】51歳の女性選手が軽快な打撃を披露! 多世代が集まるフューチャーズ・レディースの練習風景

守備や打撃の動きを見た後に年齢を知ると耳を疑う。しかも、野球未経験と聞けば驚きはさらに膨らむ。現在51歳の大石節子さんは、昨年4月に立ち上げられた「フューチャーズ・レディース」の創設メンバーだ。中学ではソフトボール部に所属したが、高校以降はスポーツとほとんど縁がなかった。野球をしたのは50歳で初めてだった。

「最初は練習に参加するのも気が引けて、恐れ多い感じでした。ただ、実際にやってみたら、上手くなくてもできると分かりました。年齢なりのプレーをできるのが野球の良さだと思います」

大石さんの家族は夫が野球経験者で、長女はソフトボール、長男は野球をやっていた。大石さんは子どもたちのサポートを通じて競技の楽しさを知ったという。そして、長男が高校野球を終えたタイミングと「フューチャーズ・レディース」の創設が重なり、「実際に野球をやってみよう」と決意した。

フューチャーズ・レディースの大石節子さん【写真:間淳】

「野球は自分ができないことをセーブしても楽しめる」

チームメートには中学生や20代社会人の野球経験者から、自分より年上の野球初心者もいる。大石さんは「体にガタはきています」と笑うが、練習試合ではセーフティバントで一塁まで全力疾走。若い選手に負けない姿を披露する。チームの幅広い年齢構成に「若い子と一緒に野球をしたり話をしたりすると若返りますし、自分より年上の方とプレーしていると野球は生涯楽しめるスポーツだなと感じています。年齢に関係なく、いいプレーが出た時にグラブを合わせたり、声をかけたりするのが特に好きです」と語る。

野球は「男のスポーツ」、「未経験者にはハードルが高い」との印象が強い。だが、大石さんは女性でも、50代からでも始められると実感している。大石さんは時々、肩に痛みが出るため「投げる」ことをセーブしている。その分、「打つ」「走る」は目いっぱい楽しむ。体力をつけるために会社までの通勤を自転車から徒歩にして、片道1時間歩く時もあるという。

「野球は自分ができないことをセーブしても楽しめるスポーツ。野球を始めてから普段の生活でも自分にできること、できないことを考えて、無理をしないで楽しむようになりました」。

大石さんは50歳が自身のターニングポイントだったと振り返る。転職と野球。新たに2つのことに挑戦した。ところが、早く仕事に慣れて戦力なりたいという気持ちが強く、オーバーワークになって体調を崩した。「まだ大丈夫と思っていたら帯状疱疹が出てしまいました」。大石さんは一度立ち止まり、野球で学んだ考え方を仕事にも取り入れた。「やりたいことと、ほどほどにすべきことを考えて、自分に合った生活にしようと思いました」。無理はしない。肩の痛みがあって投げるのをセーブしても、打ったり、走ったりできる野球と仕事を重ね合わせた。

野球は年齢も性別も経験も問わず楽しめる。野球未経験だった50代女性の姿には十分な説得力がある。(間淳 / Jun Aida)

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