横浜に完成した室内練習場はまるで“秘密基地” 少年野球の仲間が大人になって叶えた夢

横浜・港北区にオープンした室内練習場「BAY SIDE LINE」【写真:伊藤賢汰】

ラプソードも導入されている横浜・港北区の「BAY SIDE LINE」

2022年2月、横浜市にオープンしたばかりの室内野球練習場がある。野球用品や選手のサポートなどを行う「tsuzuki BASE」が運営する「BAY SIDE LINE」。投球や打球を分析する最新の機器「ラプソード」も導入されている会員制の施設だ。代表は名門高校野球部出身で、設計担当者はあの有名な女子投手の兄。立ち上げメンバーたちは約20年前の地元の少年野球のチームメートだった。この場所には野球が繋ぐ縁、絆があった。

【写真】「BAY SIDE LINE」の設計に携わった吉田さんは「ナックル姫」の兄 貴重な兄妹2ショット

横浜市港北区の物流倉庫や工場が集まるエリアに、ライブハウスのような目を引く建物がある。野球専門の室内練習場「BAY SIDE LINE」。施設名と場所を聞くと、首都圏に住む人は違和感を覚えるだろう。練習場は都筑区の隣・港北区にある。施設の代表を務める高橋悠太さんが理由を明かす。

「自分たちの地元が都筑区なんです。この練習場は昔から一緒に野球をしてきた地元の仲間たちと作りました。都筑区で思うような物件が見つからず、隣の港北区で作ることにしました」

小学校3年生から野球を始めた高橋さんは地元の緑中央シニア(現・横浜青葉シニア)を経て、甲子園常連校の栃木県・佐野日大高で投手としてプレーした。高校では横浜を離れたが、地元への愛着は変わらなかった。「野球を通じて知り合った仲間と、野球の環境づくりをする仕事ができたらいいなと思っていました。仲間と一緒にする仕事が一番楽しいと思っています」。高橋さんにとって野球を通じた「仲間」は「友達」とは少し違う特別な存在だ。

練習場の設計を担当した仲間は、「ナックル姫」の愛称で親しまれる吉田えりさんの兄で、シニア時代にバッテリーを組んだ吉田勇介さん。他にも、植田一気さんらシニア時代のチームメートを中心に練習場を完成させた。オープン直前の1月は空調のない中、夜通し作業する日が続いたという。それでも、寒さや疲労を上回る楽しみとやりがいがあった。吉田さんは「大人になって、みんなの力で何かをつくる機会は多くないと思います。体がしんどい時はありましたが、ワクワクしました」と振り返る。

施設には最新の分析機器「ラプソード」が計6台設置されている【写真:伊藤賢汰】

投手用と打撃用で計6台、メジャー全球団が導入する「ラプソード」設置

室内練習場にはティー打撃ができる打席が5か所設置されおり、3人が同時に投球できるブルペンもある。さらに、マシン打撃やノックができるスペース、ウエートトレーニングの器具もある。そして、練習場の特徴の1つが投手用2台と打撃用4台の「ラプソード」。練習場は24時間営業で会員制になっている。

高橋さんは子どもの頃、比較的めぐまれた環境で練習できたという。だが、首都圏では専用グラウンドがあるチームは決して多くない。さらに、公園や空き地は年々減り、子どもたちの野球ができる場所は少なくなる一方だ。高橋さんは「試合で結果を出すには準備する時間と場所が必要です。それでも、思い通りの成果を残せるとは限りません。時間を気にせず、この室内練習場を使って思う存分、練習してほしいです」と力を込めた。

施設づくりに奮闘した中心メンバー(左から)植田さん、高橋さん、吉田さん【写真:伊藤賢汰】

「子どもたちが野球をするところはシニア、ボーイズ、部活と色々ありますが、土日を中心にしたチーム練習だけで結果を出すのは簡単ではないと思います。小、中、高校生が試合に向けてしっかり準備をして、パフォーマンスを発揮できる場所が必要。自分が満足できる成果を出せるかどうかは、進路だけではなく思い出にも関わる大事なことです」

立ち上げメンバーは、小学生のときからの仲間で、人には言えない笑ってしまう“秘密”も共有できる仲。一緒に白球を追いかけ、大人になって夢を追いかけた。子どもの頃からの仲間で力を合わせて作り上げた「BAY SIDE LINE」は、こだわりや思いが詰まった「大人の秘密基地」のような場所だった。(間淳 / Jun Aida)

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