反戦への思い共有 川崎の会社員が現地工芸品販売 収益はウクライナ人道支援へ

ウクライナの民族衣装を手にする中野さん=川崎市高津区

 ウクライナやロシアに友人がいる川崎市高津区の会社員中野絢斗さん(24)が、現地の伝統工芸品などを販売し、収益を人道支援活動に寄付する取り組みを9日から始める。市内外の地域イベントなどで出店する予定で、「反戦の思いを共有できれば」と呼びかける。

 学生時代にロシアや東欧諸国を訪れ、現地で知り合った友人と現在も連絡を取り合っているという中野さん。ウクライナの友人も無事だが、いつ攻撃されるか分からない不安を口にしているという。

 首都キーウ(キエフ)や東部ハリコフなど、かつて歩いた地域が戦地となる様子も目にし、心を痛める日々が続く。「海があって開放的で、人々は明るく暮らしていた」という当時の光景を重ね、ロシア軍の侵攻当初は悲しみや怒りが胸に込み上げた。

 だが次第に「自分には何もできない」と、無力感にさいなまれるようになった。自宅でふさぎ込む日もあったという。それでもウクライナやロシアから留学中の友人と話し、「小さなことでもいいから、できることをやろう」と決心。自らのコレクションや友人から譲ってもらった雑貨など約100点を集め、販売収益を寄付することにした。

 この取り組みを始める理由がもう一つある。ロシア人への悪いイメージが増長していることに胸を痛め、「少しでも誤解を解きたい」と考えている。

 交流サイト(SNS)で以前投稿したロシアに関する好意的な内容に対して、いわれのない誹謗(ひぼう)中傷を受けることもあるという。中野さんは「ウクライナ国民だけでなく、ロシア国民も悲しんでいる人がいることを知ってもらいたい。現地の文化に触れ、侵攻について考えるきっかけにしてほしい」と話している。

 東急田園都市線梶が谷駅周辺で開催する「梶が谷さくらまつり」(9日)や、川崎市高津区の大蓮寺(10日)、同区の商業施設「eM PARK(エム・パーク)」で開催するマルシェ(16日)で出店する予定で、他にも検討中。収益は日本ウクライナ友好協会「KRAIANY」に寄付する。問い合わせは、メールukraina.mir2022@gmail.com

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