祖国の家族案じる日々 横浜の商社勤務のウクライナ人女性 「SNSで戦争反対発信を」 商品のワイン販売で支援も

ウクライナ産のワインを手にするヴァシナさん(右)と石井社長=横浜市中区

 ロシアの軍事侵攻から2週間が過ぎた。ウクライナ産ワインを扱う商社「ヘルムズ」(横浜市中区)で働くウクライナ人のヴァシナ・アンナさん(37)=同市=はロシア国境近くの祖国に住む母親や妹の身を案じる日が続く。「早く戦争が終わって平和な生活が戻ることを願っている」と話す。

 同社でワイン事業を担当しているヴァシナさんの実家は、北東部のハリコフ州に隣接するスムイ州にある。軍事侵攻のニュースは会社に来て知った。7時間の時差があるウクライナはまだ夜中。連絡が取れずに心配だったが、間もなく無事を確認できた。「ほっとした」という。

 毎日、地下のシェルターで暮らす母親らと連絡を取り合っているが、「疲れているようだ。怒りや絶望から、どうしたらいいのか途方に暮れている」。スムイでは戦闘地域から安全に待避させる「人道回廊」も始まったが、「安全な行き先があるとは思えず、殺される危険を冒してまで逃げることは考えていない」と母親は話しているという。

 収束が見えない戦闘に、ヴァシナさんは「昔からこの地域では不安定な状況は続いていたが、まさか21世紀に戦争が起こるとは思わなかった」と憤りを隠せない。自身が運営するユーチューブなどに「何かできないか」との日本人からの問い合わせも多く、力強い支援を感じている。「個人でもSNS(会員制交流サイト)などで戦争反対の思いを発信してほしい」と応じている。

 参加した日本国内の反戦デモには、在日ロシア人の姿もあった。「国家による戦争。人間同士は関係ない。一刻も早く平和が戻ってくれれば」と切に願う。

 「ヘルムズ」では昨年2月から、ウクライナ産ワインの輸入を始めた。現在は26種類を販売する。花の香りや黒海のミネラルを含んだ塩味を感じるのが特徴といい、ウクライナ西部、南部合わせて5カ所のワイナリーと独占販売契約して商品を仕入れている。仕入れ先のワイナリーでは、スタッフの多くが避難を余儀なくされシェルターに隠れる日も少なくないという。

 ワイン購入者からは「心ばかりですが応援にもなれば」とのメッセージも届く。同社ではワインの売り上げの一部をウクライナに寄付するという。石井佑樹社長(37)は「ロシア国民も含め多くの人に真実を知ってもらいたい。皆で声を上げていくことが大切」と協力を呼び掛ける。

 同社ワインのホームページhttps://vinopioner.co.jp/

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