西武ドラ1に宿る“エースの資質” 首位・鷹打線を零封…7連敗中のチームに刺激

西武・隅田知一郎【写真:荒川祐史】

プロ初の100球超え…辻監督「球が浮いてきていた」

■西武 0ー0 ソフトバンク(9日・ベルーナドーム)

西武のドラフト1位ルーキー・隅田知一郎(ちひろ)投手が、新人離れした凄みを見せた。9日に本拠地・ベルーナドームでソフトバンク戦に先発し、6回2/3を投げて4安打無失点。7連敗中のチームは結局スコアレスで引き分け、トンネルを抜けることができなかったが、ここまで10勝1敗で首位を走る鷹の打線を寄せ付けなかった。

大胆かつ繊細だった。最速150キロの速球で右打者の内角をえぐる一方、カーブやスライダー、カットボール、チェンジアップ、スプリットと多彩な変化球を駆使し、相手に的を絞らせない。隅田本人も「打者の反応を見ながら上手く(ストライク)ゾーンを使えました」と納得の表情を浮かべた。

試合前の時点で1勝1敗、防御率1.50だった新人左腕に、ソフトバンク側も対策を練って臨んでいた。前日はスタメン野手9人中、スイッチヒッターのガルビスを含め6人が左打ちだったが、この日は逆に右打ちが7人を占めた。藤本監督は「隅田君に対しては右(打者)の方が打っているので」と説明し、「チェンジアップがいいし、大きなカーブもある。真っすぐも速いので、2ストライクを取られるまでは、狙い球を絞って思い切って打たせたい」と明かしていたが、隅田はその上を行った。

それだけに、西武の辻監督にしてみれば替え時が非常に難しかった。7回2死から中村晃に左前へポテンヒットを打たれ、続く松田にも左前打を許したところで、思い切って水上へスイッチ。プロ3試合目の登板で初めて100球の大台に達していた(109球)。指揮官は「本人は『まだ行けた』と言っていた」と明かし、その上で「球が浮いてきていたので」と交代の理由を説明した。

後を継いだ水上も奮起「これまでで一番、気持ちも気合も入ったマウンドでした」

新人がこれほどのピッチングをした以上、後をうけた先輩のリリーフ陣も打たれるわけにいかない。2年目で隅田より1歳上の水上は、ガルビスをスライダーで空振り三振に仕留め、雄叫びを上げながらガッツポーズ。「すみちゃん(隅田)が頑張っていたので、どんな形でもゼロに抑えようとマウンドに上がりました。これまでで一番、気持ちも気合も入ったマウンドでした」と振り返った。最終的に隅田を含め7人による継投で、延長12回を無失点で乗り切ったのだった。

惜しむらくは、主軸の山川、森を故障で欠く味方打線も三塁を踏めず、ホームベースが遠かった。それでもチームの窮地にひるまず、最強の敵に堂々と立ち向かった隅田の姿は強烈なインパクトを残した。

九州・長崎県出身だが、「子どもの頃から、特にどこのファンということはなく、小学生くらいまではよくPayPayドームに行っていましたが、ホークスが好きで行っていたわけではありません」とあっけらかんと話す。度胸満点。ルーキーにして早くも、“エースの資質”を確信させる風格を漂わせている。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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