<社説>文通費日割り変更へ 今国会で抜本見直しを

 これで本当に改革といえるのか。 自民、立憲民主など与野党6党は、国会議員に月額100万円が支給される文書通信交通滞在費(文通費)について、日割り支給へ変更することで合意した。

 しかし実態は、使用可能な範囲を広げ、使途の公開と未使用分の国庫返納は先送りした。透明性を高めるどころか、使い勝手をよくしたにすぎない。到底納得できない。今国会中に抜本的に見直さなければ、政治不信は広がるばかりである。

 文通費の在り方に問題提起したのは日本維新の会だ。昨年10月の総選挙で当選した議員が在職1日で満額を受け取ったことを問題視した。

 2009年にも同様の指摘が国民から挙がった。同年8月30日の総選挙で当選した議員に、8月の在職2日で歳費(給与)と文通費合わせ満額の230万円が支給された。翌10年の臨時国会で歳費の一部自主返納を可能にする法が成立したが、文通費は議員の不満が強く返納対象から除外した。

 文通費は、国会法と歳費法を根拠とする手当である。歳費とは別に支給され、非課税で使途報告や残金の返還義務もなく「第2の歳費」と呼ばれる。現状では「飲み代に使っても分からない」と指摘されている。

 文通費の支給が決まった1947年当時、議員会館はなく地方出身議員が東京に滞在するには多大な出費が必要だった。政治活動をするにも郵便や印刷物くらいしか広報手段はなかった。

 現在は議員宿舎は整備されている。2007年に使用を開始した赤坂議員宿舎の家賃は4月から月額約1万3千円(9.7%)引き下げ、約12万5千円になる。都心の一等地にあり「豪華で格安」の待遇なのである。

 さらに政治活動には共産党を除き政党交付金を受け取る。今年各党に交付される政党交付金は、総額約315億円に上る。交付金に加えて文通費も政治活動に充てるなら二重取りではないか。

 国会議員の感覚は世論や地方議会とずれている。二つ例を挙げよう。

 共同通信社が昨年12月に実施した全国電話世論調査によると、文通費の見直しを巡り今国会で取るべき対応では「日割り支給に加え、使い道の公開なども義務付ける」との意見が81.7%に上った。しかし与野党は日割り支給の先行改正を優先した。

 全国市民オンブズマン連絡会議によると、地方議会で文通費に相当する政務活動費は47都道府県・20政令市・62中核市の合計129議会全てが領収書を公開、うち80議会(約62%)はインターネットでも公開している。

 税金を使うからには、国会議員にも使途の基準を明確にして公開させ、未使用分は国庫に返納させる。当然の措置である。

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