「iDeCo」の制度変更で影響ある3つのポイント、メリットあるのはどんな人?

確定拠出年金は、アメリカ人の老後の資産形成を力強く後押しした401kという制度を模して、2001年に日本版401kとして始まりました。個人型と企業型の2つの種類がありますが、制度開始から20年の月日を経て、どんどん使いやすく、またメリットも拡大しています。

今回は2022年の変更点から、特に皆さんに影響のある3つのポイントをお伝えします。


非課税で運用できる期間が5年延長

2022年4月から、老齢給付の受給開始年齢が75歳までに引き上げられました。今までiDeCo(個人型確定拠出年金)の受取りは、60歳から70歳までの間で好きな時に開始できるという仕組みでしたが、この上限が75歳までとなったのです。

iDeCoは60歳まで積立をし、運用でお金を増やしていきます。もちろん60歳を過ぎたらすぐにお金を引き出して生活資金にあてることもできますが、運用が好調でもう少し運用を継続したいというケースもあるでしょう。iDeCoは運用益に対して税金がかかりませんから、非課税の恩恵を存分に受けながら、できるだけ長く運用したいという方にとっては今回の制度改正は朗報です。

iDeCoはNISAと異なり、口座内で運用商品の入れ替えが自由に行えるので、スイッチングをしながら、積極的に運用してもよし、低リスクでのんびり運用を継続してもよしと、自由度が高いのもメリットです。

制度改正の背景には、公的年金の繰下げ年齢の引き上げもあります。公的年金もiDeCoも75歳までに受け取り方を決めればよいということになりますので、より人生の選択肢が増えたと言えます。

60歳以降もiDeCoへの加入が可能に

企業においてはまだまだ60歳を定年としている会社が多いですが、それでも60歳以降再雇用等で働く人は間違いなく増えています。定年後の働き方は多様ですが、収入があるのであれば、iDeCoの掛金全額所得控除という税制メリット(※)は非常に魅力的なはずです。
※掛金が全額所得控除されため、課税所得が減り所得税と住民税が軽減される

これまでiDeCoに加入できる人は60歳までとなっていたところ、2022年5月からは65歳までに引き上げられます。まだまだ現役で働くぞ!という方は、ぜひiDeCoの掛金拠出を継続しましょう。もし職場が変わる場合は、その旨を運営管理機関に伝えなければならないので、手続きを忘れないように注意してください。

iDeCoの継続加入を希望する場合、老齢給付(企業型の老齢給付は受け取っても可)を受け取っていない、老齢年金を繰上げ受給していないことも併せて条件となっています。まずは慌てずに、継続加入の手順を運営管理機関に確認してから行動を起こした方が無難です。

今回の加入可能年齢の拡大は、60歳から新規でiDeCoに加入することも可能にしました。その場合、受取は加入から5年経過後となります。それでも5年加入すれば、退職所得控除が新規で200万円作れるのですから、iDeCoの税制優遇をフルで活用できる方にとってはメリットです。

仕事を続けるといっても、厚生年金に加入せずに働く場合は、国民年金への任意加入がiDeCo継続の条件となります。会社員であれば公的年金の被保険者ですが、それ以外の場合60歳で公的年金の加入義務が終了するのでiDeCo加入の条件を満たさなくなるのです。

ただし、過去国民年金の未納期間がある場合、不足期間分を後から支払う「任意加入」という制度があります。厚生年金に加入せずに働く人は、任意加入の期間だけがiDeCoへの加入可能期間なので注意が必要です。任意加入ができるのかどうか、また何カ月分できるのかは、その方の年金加入歴に応じますので、年金事務所等にお問合せ下さい。

任意加入という制度は60歳以降の「保険料後払い期間」であると共に、海外居住者が任意で国民年金に加入する制度でもあります。従って、留学や仕事で海外に居住している方も、これからはiDeCoに加入ができるようになります。日本での所得がなければ、所得控除のメリットはありませんが、運用益非課税で老後資金をつくる意義はあるかと思います。

企業型確定拠出年金に加入している750万人にiDeCo併用加入のチャンス

これまでは一部の会社を除き、お勤め先で企業型確定拠出年金に加入していると、iDeCoへの併用加入は認められませんでした。企業型確定拠出年金は、会社が掛金を拠出してくれるので、自分のポケットマネーを拠出するiDeCoより有利な反面、せっかくの税制優遇枠を使い切れないというデメリットもありました。

それというのも、会社が拠出する掛金の多くは1万円未満という統計もあり、特に若い方や社歴が短い方の掛金が十分ではないことが指摘されていました。企業型確定拠出年金は、法律上月の掛金拠出額が55,000円を上限としているのですが、実際この税制優遇の恩恵をフルで受けられている人は少ないのです。

そこで、2012年にマッチング拠出という制度が新設され、会社が拠出する掛金に加え、個人も掛金を拠出できるようになりました。しかし、マッチング拠出では個人の掛金は会社の掛金額を上回ってはいけないというルールがあるため、魅力的な制度ではないと判断されたのか、それほど多くの会社に採用されませんでした。

その後、企業型確定拠出年金に加入している人でも、iDeCoに併用加入ができるように法律が変わったのですが、会社がそれを認めた場合に限るという条件があったので、やはりなかなか普及しませんでした。

そこで2022年10月からは「会社のルールに関わらず」個人の判断でiDeCoに併用加入することができるように変更されます。掛金の上限は月20,000円でかつ会社の掛金との合計が55,000円を上回らないことが条件です。なお、確定給付企業年金(DB)もある場合は12,000円でかつ会社の掛金との合計が27,500円となります。

会社にマッチング拠出制度がある場合、iDeCo併用とどちらかを選びます。例えば、会社の掛金が1万円であれば、マッチングできる個人掛金は1万円が上限ですが、iDeCo併用なら2万円まで拠出できるので、掛金面でのメリットは後者の方が大きくなります。


選択肢が広がると、なにが自分にとって良いのか迷う方も増えるかと思いますが、専門家に相談するなどして、制度をしっかり活用していただきたいと思います。

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