小学生だから“基本しかするな”はNG…必要なのはレベルの見極め
どんな指導でも、学ぶ側のレベルや段階に合わせた伝え方は欠かせない。発育途中の少年野球では“基本からの逸脱”はタブーと考える向きもあるが、有望な小学生たちにとっては成長を停滞させる原因にも? 逸材には時に“飛び級”のような指導も必要になってくるという。
全国のトップ小学生たちが集う昨年末の「NPB12球団ジュニアトーナメント KONAMI CUP 2021」では、中日ドラゴンズジュニアが優勝。2015年から指導にあたる元中日内野手の湊川誠隆監督は、選手たちのレベルが年々上がっていると肌で感じている。
出場した選手たちの多くは、中学で強豪チームに所属し、名門高校への進学を目指していく。その先には、プロ野球選手という大きな夢がある。セレクションをへて中日ジュニアに選ばれているだけに、ポテンシャルは言うまでもない。
9月にチームを結成し、年末のトーナメントまで限られた期間での指導となるが「僕は子どもたちを大人扱いしています。プロの技だってできますよ。できるかできないかは、させてみないと分からないんで」と湊川監督は言う。逆シングルにランニングスロー…。すでに基本が備わっている選手だからこそ、その上の段階を求める。
未発達な体に負荷かかる技術は教えない「怪我せずやるのが大前提」
「『小学生だから必ず打球の正面に入って両手で捕りなさい』とか言っているようだったら、(成長の)スピード感についていけない。トップレベルの選手に対しては“飛び級”というか、できるだけ伝えていったほうが飲み込みが早いですからね」
もちろん、未発達な体に無理がかかるような技術は教えない。「成長過程なので、怪我しないようにやるのは大前提」。あくまで、凝り固まった“基礎の押しつけ”にはならないよう意識しているという。早い段階から応用編を身につけられれば、中学、高校と競争が激しくなる中でライバルたちに差をつけられる可能性もある。
ただ、上達スピードや意欲の大小は子どもたちによって千差万別。野球未経験に近い子の指導もする湊川氏は「その子に合わせて、伝え方を変えていくのは大事ですね」と説く。選手の成長を加速させる学習塾のような“段階別指導”は、指導者側の見極めと力量も問われてくる。(小西亮 / Ryo Konishi)
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