子どもにも「医療保険」は必要なのか?「医療費無償化」で見落としがちな出費とは

「子どもに医療保険は必要ですか?」と、よくお問い合わせをいただきます。

地域により助成の金額や所得制限など条件は違いますが、全国で医療費無償化が進んでいます。

医療保険は無駄で、医療費無償化のうちは、加入する必要はないのでしょうか?


子ども医療費助成の現状

医療費無償化とひとくくりにしていますが、国の助成と各自治体の助成には違いがあります。

国の助成は2通りで、一つは自己負担を抑える助成。小学校入学前までは自己負担割合は2割で、一般の3割より負担が抑えられています。もう一つは、小児慢性特定疾病への助成。子どもの慢性疾患のうち、小児がんなどの特定疾病については、長期に渡り家計に負担を及ぼすことや、子どもの健全育成のため、自己負担を補助する制度です。

いわゆる医療費無償化と呼ばれている助成は、各自治体が定めている制度です。平成30年4月の厚生労働省「乳幼児等に係る医療費の援助についての調査」によると、すべての都道府県および市区町村が、乳幼児にかかわる医療費の援助を実施していることがわかっています。さらに援助については、都道府県では、通院入院ともに、就学前までの児童が最も多く、市区町村では通院入院ともに、中学生までが多かったという調査結果が出ています。無償化が中学校までという自治体でも、通院に一部自己負担がある、さらに所得制限があるなど、自治体によってばらつきがあります。

令和4年4月現在の政令指定都市の状況を公式サイトで確認した一覧が下記の通りです。

全国のごく一部のデータですが、高校卒業まで所得制限も自己負担もなく、医療を受けられるところはまだ少ないのが現状です。

突然やってくる子どもの病気、親の休業手当にひと役

医療費が無料になったとしても、子どもの病気やケガは突然やってきます。不測の入院でお仕事を休まざるを得ない、残業ができないなどの収入減が考えられます。入院にかかる諸雑費は思いのほかかさみますし、食事をテイクアウトで済ませてしまったり、兄弟姉妹がいれば延長保育や預かり施設に頼むこともあるでしょう。そんな出費や収入減の穴埋めに、医療保険の給付金は活用できます。

条件がつきにくい、生まれてすぐが入り時

どのタイミングで保険に加入するのがベストか。母乳を飲んでいるうちは免疫力が高いので、病気になりにくい。保育園に入るまでは病気をもらいにくいしケガのリスクも少ない。保育園に入る頃、小学校に上がる頃……と悩みどころですが、入り時は生まれてすぐです。

先天性の異常が認められる、または新生児黄疸があり光線療法の治療を受けたなどがなければ、1ヵ月健診までは比較的病気になりにくく、医療保険に入る際に必要な告知項目に該当することが極めて少ないからです。

1ヵ月健診を受けると、はっきりとした異常とは言えないけれど、気になる項目が見受けられ、医師に経過をみていきましょうという指摘をもらうことがあります。医師からすると軽度な症状でも、特段治療はせず、経過を見ていく段階の症状は、保険会社側からすると、リスクが高いとみなされることもあり、加入ができなかったり、特定の部位のお支払いができない条件がつくこともあります。

多くの保険会社が決めている、医療保険の加入条件は、出産16日目からです。出産16日目から1ヵ月健診を受ける前までの申込みが入りやすい時期と言えます。

保険料総額は変わらない?長く払う方がお得

医療費無償化の間は加入せず、保険料を払わない方が生涯の保険料を安く抑えられるのではないか、というお問合せもよくいただきます。医療保険は一生涯の保障を分割で払うように計算されています。

ある保険会社の商品で、入院日額5,000円の保険料を0歳、20歳、60歳、80歳それぞれから、90歳まで払う保険料を計算してみました。すると総額は0歳で1,684,800円、20歳で1,881,600円、40歳で1,845,000円、60歳で2,215,800円、80歳で1,836,600円になりました。

年齢によって若干違いますが、生涯払う保険料に大差はありません。長い期間で分割すれば1回分の保険料は安くなりますから、少しでも早く加入した方が月々の負担は少なくて済むのです。

期間限定より一生涯のベースを

子どものうちは医療費がかからないから、高校卒業したら医療保険を考えるという方もいらっしゃいますが、その間、何らかの病気にかかってしまうことは稀ではありません。

医療保険は、申込時に加入する人の体況を告知するステップがあります。告知内容により無条件で加入、特別な条件を付けたうえで加入、保険料を割増して加入などさまざまですが、加入後にケガや病気で体況が変わっても、保険料や保障内容が変わることはありません。

日常生活に大きな支障がない病気でも、長く付き合わなければならない病気や、完治が難しい病気になってしまった場合、特に悪性腫瘍と診断された場合は、新しく医療保険に加入することはとても難しくなります。

生まれてすぐに、一生涯の医療保障に加入しておけば、万一持病を持ってしまった場合でも、医療費負担をカバーしていくことができるので安心ですね。まずは子どもに何かあった時、どんな影響があるかをご自身のライフプランとシミュレーションし、保険を取り入れるかどうかを検討してみてはいかがでしょうか。

© 株式会社マネーフォワード