大阪桐蔭主将が大企業を捨て選んだYouTuberの道 プロも教えを請うミノルマンとは?

「ミノルマン」としてYouTubeチャンネルで動画を配信している廣畑実さん【写真:橋本健吾】

大阪桐蔭高で主将を務め亜細亜大、JR東海とアマ野球エリートを歩んだ廣畑実さん

誰もが簡単に取り入れることができる野球の技術論で注目を集めている人物がいる。大阪府・八尾市を拠点にする野球塾「Amazing」を経営し、自らも「ミノルマン」としてYouTubeチャンネルで動画を配信している廣畑実さん。大阪桐蔭高では主将を経験し、亜細亜大、JR東海とアマ野球のエリートを歩んだ男が「子どもたち、野球界のレベル向上に貢献したい」と、会社をやめ全ての情熱を野球に注いでいる。

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廣畑さんは大阪桐蔭高で2年生だった2010年に選抜大会に出場。主将となった2011年には1学年下のエース・藤浪晋太郎らと共に夏の大阪府大会決勝に進んだものの、東大阪大柏原にサヨナラ負け。その後は亜細亜大を経て、社会人野球のJR東海に進んでプロ入りを目指した。

だが、入社直後の2016年にトミー・ジョン手術を受け「年齢的にもプロは厳しい。このまま野球をやっていてもダメだな」と、わずか1年で野球部を辞めて社業に専念。その後は、駅員として働いていたが、2019年に新大阪駅でプロ野球選手と出会ったことがきっかけで退社することを決意した。

「新大阪駅はプロ野球選手の移動が多い場所。たまたま、目が会った時に敬礼され、それを笑顔で返した時に『俺、何やってんだ……』と感じてしまった。相手は自分がなりたかったプロ野球選手。プレーでは超えられないけど、“野球”で絶対に勝ってやると思って。そこで会社を辞めることを決めました」

野球塾で指導する廣畑さん(左)【写真:本人提供】

野球の技術動画をインスタグラムに上げると、わずか3か月で300人から3万人にフォロワーが増加

元々、駅員をしながら、子どもたちに無料で指導などを行っていたが、ある時、インスタグラムで技術動画を上げたところフォロワー数が一気に増加した。「今でこそ多くの技術動画が出ていますが、当時はインスタでやっている人はいなかった。これはもしかしたら……、と思ってやると、想像以上の反響がありました」。当初は300人程度だったフォロワーが、動画を上げていくと、わずか3か月で1万人に到達した。

1つの目標としていたフォロワー3万人もすぐに集まると「これは需要がある」と確信。そこからは全国を飛び回り、元プロ野球選手らが経営する様々な野球塾を見学して情報を集めた。技術は勿論だが、他競技の選手などからの意見も取り入れ、体の使い方などを研究していた廣畑さんは「これなら勝てる」と自信を持って退社。その後はすぐさま野球塾、YouTubeチャンネルを開設し、コロナ禍になってからはオンラインでの指導も開始した。

安定した一流企業を辞めることに周囲は大反対だったものの、「やると決めたら、とことんやる人間なので(笑)」と廣畑さんの情熱は増すばかり。現在、YouTubeとインスタグラムのフォロワーは計13万人を超える。影響力を持つと、自然とモデルを確立できるようになった。

「動画で興味を示してくれた人がオンラインレッスンに参加してくれて。そこでもっと知りたいと思った人が野球塾に来てくれた。野球塾をずっと続けさせるためにも、無限ループになるものを作りたかった。動画→オンライン→塾の3つがグルグル回って。これが大きかった」

プロ野球選手もオフ期間に“駆込み寺”として野球塾を訪れる

安定した収入を得ることができるようになると「野球に関わるものを全てやりたい」と欲も芽生えた。2021年には自らの経験を元に治療院、パーソナルジムも経営。順調に収益を上げていたが、ふとした時に「本来、自分が会社を辞めてやりたかった“野球”とは違う」と我に返ったという。

近年は野球人口の減少が危惧され、その中で野球塾を全国に展開していくには高い壁があった。だが、「そっちの方がやる価値はある」と、わずか1年で治療院などを畳み、現在は“本業”に全てを注ぐ。今ではプロ野球選手もオフ期間に“駆け込み寺”として廣畑さんの塾に姿を見せ、技術やトレーニング理論を請うという。

野球技術動画の“先駆者”として知名度を上げ、今では多くの生徒を抱えるようになった廣畑さん。「技術論に絶対はないと思っています。人それぞれにあったもの、昔ながらの間違った指導を変えていきたい」。少年、少女、そして指導者が簡単に取り入れられる技術をメインに、今後も野球界の発展に注力していく。

【動画】子どもから大人まで「分かりやすい」と大絶賛 ミノルマンのバズった「誰でもタイミングがとれる2つのコツ」

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(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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