史上初の空港戦は、ダニエル・セラ&リカルド・マウリシオの強豪ユーロファーマRCが制圧/SCB第3戦

 ブラジルが誇る観光都市リオデジャネイロを望むアントニオ・カルロス・ジョビン国際空港(旧ガレオン国際空港)の設備を活用し、SCBストックカー・ブラジル“プロ・シリーズ”第3戦はシリーズ史上初となる“エアポート・レース”が実施された。

 4月9~10日に実現したこの“GPリオ・ガレオン”は、グアナバラ湾に浮かぶ最大の島ゴヴェルナドールに位置する空港内に特設トラックを建設。5度のチャンピオン獲得経験を持つ現役ドライバーの名を冠し『シルクイート・カカ・ブエノ』と命名されたが、そのサーキットを制圧したのは強豪ユーロファーマRC勢となった。

 シリーズ3連覇を記録するダニエル・セラ(ユーロファーマRC/シボレー・クルーズ)が、予選ポールポジションから初戦を制覇すると、その僚友でこちらも3冠獲得のリカルド・マウリシオ(ユーロファーマRC/シボレー・クルーズ)がレース2で逆転勝利。誰にとっても初挑戦となる未知のトラックで、地力の差を見せつけた。

 2012年に当時のリオ五輪向け施策の一環として、同市にある唯一のパーマネントサーキットが取り壊しとなり、以降は「サーキットを持たない都市」となっていたリオデジャネイロだが、その状況を憂慮した関係者や州知事らの尽力を経て、今回リオ・ガレオン空港に全長3225m、7つのコーナーを備えたサーキットが誕生した。

 SCBを主催するバイカーの担当者いわく「北米インディカーなどの事例を参考に」設定されたトラックは、バンピーかつチャレンジングなコーナーに加え、全長1500mを超えるストレートを持つハイスピードなレイアウトとなり、各チームにとってはパーマネントコースとは異なるマシンセッティングが求められた。

 その影響はプラクティスの結果から現れ、2度目のセッションでは隣国アルゼンチンからフル参戦2年目を迎えた“グリッド上唯一の外国人”であるマティアス・ロッシ(A.マティス・フォーゲル/トヨタ・カローラ)が、自身初のトップタイムを記録。2番手にリカルド・ゾンタ(RCMモータースポーツ/トヨタ・カローラ)、背後にセラとマウリシオのユーロファーマ陣営が続き、5番手には同戦向けのスペシャルカラーをまとったフェリペ・マッサ(ルブラックス・ポディウム/シボレー・クルーズ)が続くなど、レギュラートラックとは様相の異なるリザルトとなった。

イベント前日には、クラウディオ・カストロ州知事が同乗し、カカ・ブエノがデモランを担当した
フル参戦2年目を迎えた”グリッド上唯一の外国人“であるマティアス・ロッシ(A.マティス・フォーゲル/トヨタ・カローラ)がスピードを披露した
オープニングのレース1、そしてリバースのレース2ともに、ホームストレートエンドでは“7ワイド”の攻防が繰り広げられた

■オープニングヒートはセラがレース全域を支配

 迎えた予選Q1ではTOYOTA GAZOO Racingブラジルのワークスカラーを採用するロッシの117号車が首位に立つも、ポールポジションを決めるQ3では「ライバル陣営にクリーンエアを与えたくない」という心理でコース上が混み合うなか、アルゼンチンのスターはセザール・ラモス(イピランガ・レーシング/トヨタ・カローラ)とまさかの接触を喫し、ペナルティを含め失意の6番グリッド止まりとなってしまう。

 この結果、最後の最後でセルジオ・ヒメネス(スクーデリア・キアルリ/トヨタ・カローラ)を逆転した38歳のセラが、キャリア通算13度目のポールを獲得。混戦のなかチャンスを確実にモノにする王者の貫禄を披露した。

「クレイジーでエキサイティングな予選だったね。誰もが相手にクリアな空間を与えたくなかったし、誰もが(スリップを活用されることを嫌い)1列に並ばないようゆっくり走行していた。だからチャンスは最後の1ラップだった」と、全34台中29台が秒差圏内のセッションを振り返ったセラ。

「その瞬間のクルマはとてもよく振る舞ってくれたし、すべてうまくいったことをうれしく思う。明日は1台のクルマが別のクルマを引っ張るという厳しいレースになるだろうね」

 明けた日曜、特設スタンドを埋める大観衆の前で始まったオープニングヒートは、ホームストレートエンドで“7ワイド”の攻防が繰り広げられるなか、その“熱狂の主人公”たるセラが実質的にレース全域を支配し、盤石のポール・トゥ・ウインを達成。

 背後では「荒れた路面はお手のもの」とばかりに、スーパーTC2000(STC2000)4冠の実力を発揮したロッシが2位まで挽回してフィニッシュラインを超え、土曜以来のスピードがフロックでないことを証明。表彰台最後のスポットにはマウリシオが入り、ユーロファーマ陣営のダブル・ポディウム獲得に貢献する結果となった。

 一方、今季初の表彰台獲得を目指しフロントロウ2番手発進を切っていたヒメネスのカローラは、超高速コーナーの”クルバ・ペトロポリス”で、ルーベンス・バリチェロ(フルタイム・スポーツ/トヨタ・カローラ)とベト・モンテイロ(スクーデリア・キアルリ/トヨタ・カローラ)のアクシデントに巻き込まれ、敢えなく終戦となってしまった。

スペシャルカラーをまとったフェリペ・マッサ(ルブラックス・ポディウム/シボレー・クルーズ)は、予選9番手からレース1で6位入賞を果たした
レース2序盤はセカンドロウ発進のチアゴ・カミーロ(イピランガ・レーシング/トヨタ・カローラ)が隊列を率いた
初開催イベント、空港設定の広大なトラックにより、週末はアクシデント多発の展開となった

■レース2ではトップのゴメスにまさかのペナルティ

 週末2番目のレースも同様に予測不可能な結果となり、リバースグリッド採用の序盤こそ前方発進のチアゴ・カミーロ(イピランガ・レーシング/トヨタ・カローラ)が隊列を率いたが、義務ピットを経た残り2周時点で首位争いはマルコス・ゴメス(カバレイロ・スポーツ/シボレー・クルーズ)とマウリシオの一騎討ちに。

 前戦でも攻防の舞台となったターン4の“クルバ・ペトロポリス”で、首位マウリシオを仕留めたゴメスだったが、そのままファイナルラップへと突入し先行してチェッカーを受けたものの、前周オーバーテイクの瞬間に同区間ではイエローフラッグが掲出されていたことが判明。

 黄旗区間での追い越しは見逃されることなくレース後5秒加算ペナルティが科され、マウリシオが勝利を手にし、ブルーノ・バプティスタ(RCMモータースポーツ/トヨタ・カローラ)、ガエターノ・ディ・マウロ(KTFスポーツ/シボレー・クルーズ)が並ぶ表彰台となった。

「ユーロファーマRC全体にとって、ふたつの勝利を手にしたことは非常に特別な瞬間だ。最初のレースでは最高の戦略とはいかなかったが、それでも表彰台を獲得することもできた。レース2では8番手スタートから3番手まで順位を上げ、最後はイエロー区間で一悶着があったが、最後は立場が逆転するだろうことを予期していた」と勝者マウリシオ。

 この週末の結果によりレース2でも8位に入ったセラが、王者ガブリエル・カサグランデ(A.マティス・フォーゲル/シボレー・クルーズ)とは1点差の99点とし、新たなチャンピオンシップリーダーの座を引き継ぐことに。続くSCB第4戦はサンパウロ近郊に位置するお馴染みの常設トラック、アウトドローモ・ヴェロチッタで5月14~15日の週末に争われる。

レース2でも8位に入ったダニエル・セラ(ユーロファーマRC/シボレー・クルーズ)が、新たなチャンピオンシップリーダーの座についた
ブルーノ・バプティスタ(RCMモータースポーツ/トヨタ・カローラ)はレース2で2位と今季最上位を獲得
「チームにとってもイベントにとっても、本当にクールな週末だった。ここにサーキット新設を成功させたカテゴリーを祝福したい」とユーロファーマRCのふたり

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