ロシアによる北海道侵略、日本が強化すべき2つの力|和田政宗 プーチン政権は完全に正気を失っている――。今後の状況いかんによってはウクライナへの核使用、NATO諸国への攻撃、我が国へのミサイル攻撃、または北海道への侵略を行う可能性すらある。「まさか」はもう通用しない!いますぐ日本がすべきことを和田政宗議員が緊急提言!

ロシアへの経済制裁を強化せよ!

ウクライナの対艦ミサイル「ネプチューン」により、ロシア軍の黒海艦隊旗艦であるミサイル巡洋艦「モスクワ」が沈没した。ウクライナの反撃により侵略するロシア軍の被害が拡大しているが、これに対しロシアは、撤退したキーウへのミサイル攻撃を再開した。

さらに、東部での侵略を強めており、4月17日、マリウポリの完全制圧を狙い、マリウポリのウクライナ軍に対し、武装解除し拠点を放棄するよう最後通告を行った。これをウクライナは拒否。

ウクライナのゼレンスキー大統領は、「マリウポリで我々の兵士が全滅すれば、ロシア側との停戦交渉は中止されるだろう」と述べるなど、ロシアの攻勢により停戦交渉は実質的に破綻している。この侵略戦争は長期化することも想定しなくてはならない。

だからこそ、日本やEU諸国は即刻、原油、天然ガスを禁輸するなど、経済制裁を強力に推し進めるべきだ。プーチン大統領の体制が崩壊することを期待する人も多いが、簡単ではない。原油や天然ガスを禁輸しなければ、制裁は効かない。

ロシア国営放送などメディアのコントロールにより、プーチン大統領への支持率は8割を超える。「悪いのはウクライナ」との一方的な放送により、多数の国民がそれを信じてしまっている。経済制裁により経済が立ち行かなくなる状態にならなければ、ロシア国民からのプーチン政権への疑問は生まれない。

そして、ロシアのウクライナ領土からの完全撤退がなければ、ロシアへの経済制裁は続く。燃油高騰などの世界経済の現況は一過性ではなく、今後数年続く可能性がある。それを見据えて日本は取り組む必要があるし、だからこそ和平に向け率先して外交力を発揮すべきである。

敵基地攻撃能力の保持

そうしたなか、日本の国防を即刻強化しなくてはならない事態が生じている。ロシアは14日、太平洋艦隊のディーゼル型潜水艦2隻が、巡航ミサイルの発射実験を行ったと発表し映像を公開した。我が国固有の領土である北方領土での演習を続けており、完全に我が国を威嚇している。

私はこれまでロシアによる「まさか」に備えよと述べてきたが、プーチン政権は完全に正気を失っており、ウクライナにおいて化学兵器も使用したとみられる。

また、フィンランドやスウェーデンのNATO加盟の動きに対し、国境付近に核配備をすると述べるなど、今後の状況いかんによってはNATO諸国への攻撃が行われる可能性すらある。その場合、極東において日米に対しても攻撃が行われることが考えられ、我が国へのミサイル攻撃、北海道侵略という「まさか」を日本政府は絶対食い止めなくてはならない。

そのためにも必要なのが抑止力であるが、早急に整備しなくてはならないことを2つ挙げたい。まず、そのひとつは敵基地攻撃能力の保持である。

安倍晋三元総理は「基地に限定する必要はない。向こうの中枢を攻撃することも含むべきだ」と4月3日に述べたが、これは敵基地攻撃能力で当たり前のことだ。一部野党は反発をしているが、この「中枢」とは軍事的な中枢のことであり、軍に指示を出すためのインフラ中枢や指揮統制機能のことである。軍を指揮する根本部分を破壊しなければ、相手国の攻撃は止まらない。

自民党の安全保障調査会でも政府への提言作成のための議論が続いている。防衛力強化は世論調査においても国民の多くが望むところであり、そのために敵基地攻撃能力の保有が必要なことを我々政治家はしっかりと国民に説明し理解を広げなくてはならない。

そして、必要な能力の整備に速やかに入るべきであるが、国産長距離巡航ミサイルの開発と配備にはまだ4年かかるので、米国からトマホークを購入したり、敵基地攻撃能力の保有を宣言したうえで、いざという時は速やかにそうした兵器を購入することを明らかにすべきである。

300両の戦車では日本を守れない

そして、もうひとつの抑止力として重要なのが、これまであまり論じられてこなかった戦車である。

我が国の戦車は、タイヤ型の機動戦闘車への転換により、現防衛大綱では300両の保有となっている。しかし、ロシアの北海道侵略に備えるならば、ロシアは約3000両の戦車を保有しており、我が国の台数とは比較にならない。ロシアと同数の戦車を保有しろとまではいわないが、冷戦期に1000両以上保有していたことを考えれば、我が国の戦車はあまりに少なくなってしまった。

なぜいま、戦車が必要なのか。それはロシアが我が国国土を、陸上兵力を投入し侵略する場合、我が国の保有台数を上回る戦車を投入しなければ優勢にはならないからだ。また、我が国の10式戦車といった最新鋭の戦車に対しては、同等レベルかそれ以上の戦車を投入しなければ制圧できない。これは軍事の常識である。

一方で、さらに、侵略する相手に対し、対戦車ミサイル「ジャベリン」のような兵器があれば戦車を破壊できるではないかという論もあるが、ロシアの進軍を止めることはできても、上陸後に反撃しなければ我が国国土からは撃退できない。そのためには、戦車が最も重要である。

これまでは、中国の侵略に備えるため、海空シフト、海空重視の防衛力整備が叫ばれてきた。これはこれで重要なことであるが、陸上部隊による侵略を考えるならば、戦車をもう一度見直すべきだ。これはロシアの北海道侵略のみならず、中国に対する南西諸島侵略の際にも有効であるし、万が一の本州上陸侵略ということを考えた時にも戦車台数があるということは抑止力となる。

ロシアのウクライナ侵略により、我が国の安全保障環境は大きく変化している。ゼロベースで我が国はいかに国防を行っていくかを考え、構築していくことがやはり必要である。

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和田政宗

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