NPB史上2人目快挙の可能性あったけど…西武・辻監督が新助っ人を降板させた親心

ロッテ戦に先発した西武のバーチ・スミス【写真:宮脇広久】

NPB史上2人目の“初登板ノーノー”の可能性もあった

■西武 4ー0 ロッテ(19日・ベルーナドーム)

【実際の動画】守備もスミスの好投をアシスト! 西武・オグレディの滑り込みキャッチ

“ノーノー”のままでの継投にも、迷いはなかった。西武の新外国人右腕バーチ・スミス投手が19日、本拠地ベルーナドームで行われたロッテ戦で来日初登板・初先発し、7回無安打1四球無失点の快投を演じた。ヒットを1本も許さず96球でマウンドを降り、もちろん初白星。4回1死から福田秀を四球で歩かせたものの、次打者の時に牽制球で刺し、結局毎回3人ずつの計21人で片づけた。

スミスが7回を投げ終えた時点で、スコアは4-0。1987年の中日・近藤真一(現真市)以来、NPB史上2人目となる“初登板でのノーヒットノーラン”に挑戦する選択肢もあったが、辻監督は笑顔で降板を命じ、グータッチをかわした。「投手コーチとも話したが、球を見ていたら、あの回が精一杯でしょ。あれが8回ならまだしも、7回であの球ではしんどいよ」と話す指揮官に迷いはなかった。

ロッテの佐々木朗希投手が17日の日本ハム戦で、8回をパーフェクトに抑えながら降板したことを彷彿とさせる。佐々木朗は成長途上の体に過度の負担をかけないための交代だったが、辻監督も「(スミスは)初めての先発で気持ちが入っていただろうし、1軍と2軍の違いもある。疲れたと思うよ」と気遣った。

牽制球で見事アウトに「重心が二塁寄りにかかっていることに気がついた」

投球内容は文句なしだ。最速155キロの速球を内外角いっぱいに決め、それだけにナックルカーブ、チェンジアップ、スライダーも効果的だった。4回に一塁走者の福田秀を牽制球で刺した場面については「凄く足が速いと聞いていたし、盗塁してくると思った。重心が二塁寄りにかかっていることに気がついたので、ボールを長く持った」と説明。「あそこでアウトにできたのは大きかった」とうなずいた。投球以外の技術や頭脳も並ではない。5三振を奪う一方、ジャストミートを許さず打たせて取った。

「マイナーリーグで8回までノーヒットに抑えたことはあるけれど、完成させたことはない。本当はもう少し投げられればよかった」と言いながらも、「少し疲れが出ていたし、ともかくチームが勝ててよかった」と本人も記録にはこだわらなかった。

昨年まで3年間、西武で活躍したザック・ニール投手とは、同じオクラホマ大出身で旧知の仲。来日にあたって「アメリカと違って、日本の打者は常にホームランを狙ってくるわけではない。ストライクゾーンに投げて打たせて取ることだ。いつも通りに投げれば大丈夫だよ」とアドバイスを受けたと言う。

西武はスミス降板後、8回に登板した2番手の平良が1死から菅野に右翼線二塁打を許し、継投によるノーヒットノーランも逃した。それでも9回には守護神・増田を投入し、4-0で零封勝ちを収めた。

ドラフト1位ルーキーの隅田(今季1勝2敗、防御率1.82)、同2位の佐藤(1勝2敗、防御率4.15)、新外国人左腕エンス(1勝1敗、防御率2.79)に続き、先発ローテに4人目の新顔が登場。今井が右内転筋の張りで出遅れているのは誤算だが、昨年までチーム防御率が4年連続リーグワーストの投手陣で確実に底上げが進んでいることは、チームにとって非常に明るい材料だ。

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守備もスミスの好投をアシスト! 西武・オグレディの滑り込みキャッチ【動画:パーソル パ・リーグTV】 signature

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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