移住者ユーチューバー 松井秀明さん(23) 島外者視点で対馬の魅力発信

対馬の魅力を発信する動画投稿を続ける松井さん=対馬市内

 「どうも。ビ、ビ、ビ、ビデです」。ユーチューブの動画はいつも、お決まりのあいさつで始める。昨年、長崎県対馬市に移住した松井秀明さん(23)は、島外出身者の視点から島の魅力を発信している。チャンネル名は名前の一部をアレンジして「ビデムービー」。「独特な文化や豊かな自然を、たくさんの人に広めたい」と、投稿を続けている。
 成田空港近くの千葉県佐倉市出身。自他共に認める「目立ちたがり屋」な性格だった。小中高と応援団に所属して体育祭を盛り上げたり、率先して学級委員を務めたりした。
 ユーチューバーとなったのは2020年。神奈川県内の大学4年生の時だ。就職活動が思うようにいかずもやもやしていた時「気晴らしでもしてみようか」と、投稿してみた。最初は料理の動画。通っていた大学の情報を伝える作品にも広げてみた。少しずつ視聴者が増えていくことがうれしくなり、職業にしたいと思い始めた。
 この年の11月、家族と一緒に父の転勤先の対馬を初めて訪れたことが転機となった。浅茅(あそう)湾や烏帽子岳(えぼしだけ)など、大自然が「のんびりしていて心地よかった」。観光スポットではない場所も全て美しく、島に住んでみたいと考えるようになった。
 一方、ネットや交流サイト(SNS)の検索でヒットするのはネガティブな言葉ばかり。「観光客がいなくて寂れた」「外国に(土地を)奪われそう」-。
 本当にそうなのだろうか。「良いところなのにもったいない」「ユーチューブを続けるなら意味のあることをしたい」。観光地や食べ物、そこに住む人々…。自分が目にしたことを、多くの人に伝えたいと決心した。

松井さんが投稿している動画

 翌21年に対馬に移住。両親も「働きながらならいいよ」と理解してくれた。海ごみ対策に取り組む一般社団法人「対馬CAPPA」に就職。職員として海ごみ清掃や調査、地元児童らへの出前講義などをしている。
 ユーチューバーとしての活動は休日主体。カメラを手に島中を巡る。投稿した対馬関連の動画は、約140本に上った。まち歩きやグルメ、観光スポットを紹介。島の人たちにも登場してもらう。それぞれの思いを紹介する「情熱離島」や、地元高校の卒業生との本音トークも。島に来たときの500人程度だった登録者数は、1600人を超えた。
 対馬でのユーチューバー活動は、5年は続けるつもりだ。「楽しいことは、みんなで共有して一緒に感動したい。僕が対馬で楽しんでいることを、動画を通してみんなに届けたい」。きょうはどこへ行こう、何を撮ろう。悩みながらも、日々わくわくしている。


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