NPB復帰は「100%ない」 “近鉄最後の投手”が独立リーグで投げ続ける理由

香川オリーブガイナーズで投手兼任コーチを務める近藤一樹【写真:喜岡桜】

近藤一樹は昨季20試合に登板して香川の年間総合優勝へ貢献

2021年から活躍の場を独立リーグへ移している元オリックス、ヤクルトの近藤一樹投手は、今年も選手兼任コーチとしてマウンドに立ち続ける。目指すはNPB復帰か、それとも完全燃焼か、はたまた違うゴールを求めてか。“近鉄最後の現役投手”が今シーズンも現役を選んだ理由を語った。

これまでも多くの選手がNPB復帰を目指して独立リーグでプレーしてきたが、四国ILの香川へ入団した近藤も同じく、昨シーズンの開幕時にはNPB復帰を見据えていた。

2018年に35ホールド、42ホールドポイント(ともに当時のヤクルト球団新記録)で最優秀中継ぎのタイトルを獲得した右腕は、香川でも主に中継ぎ投手として活躍。昨年は20試合に登板して1勝0敗、8セーブ3ホールドを記録した。また、コーチとしても同姓同名の近藤壱来を不動のエースへ成長させるなど投手陣の育成に尽力し、香川の前期優勝と3年ぶりの年間総合優勝に大きく貢献した。

投手コーチとして試合中には何度もマウンドへ足を運ぶ【写真:喜岡桜】

現役にこだわる3つの理由「自分の身体は実験台」

ただ、今年にかける思いは昨年までと違う。7月に39歳を迎えるベテラン右腕は独立リーグ2年目を迎え、NPB復帰の可能性について「正直100%無い、紙一重かもしれないけど」と、その心中を明かす。

自身の“立ち位置”は十分に理解しつつも「メンタルだけは問題。何をモチベーションにしたらいいのか」と課題を抱えていた。それでもマウンドに立ち続けるのには3つの理由があった。

1つは、長く現役生活を続けられている選手について研究するため。「(40歳前後まで)歳を重ねた身体は、どういう刺激を与えて、ケアをすると、長くプレーを続けていけるのか」を探求しているという。今もストイックに鍛錬し、食事にも気を遣う。「4歳上の石川雅規さん(ヤクルト)の身体の仕組みを、僕はまだ知りません。今後そういう年齢の人を指導する可能性もあると思うので。僕は自分の身体を“実験台”にしているんです」。

ヤクルト首脳陣から伝えられた感謝「ルーティンを若い選手たちが踏襲している」

2つ目は、現役続行を可能にしてくれている球団への貢献。「独立リーグの選手は基礎が全くない。チーム内でまだ僕は良い球を投げられる方なので、チームのためになるのであれば投げます」と、今年も勝利の方程式を担う覚悟でいる。そして3つ目は「NPBへ戻れる可能性があるから」。紙一重の可能性に賭け、近藤は大舞台のマウンドに再び立つ日を諦めてはいない。

ヤクルトが昨季20年ぶり6度目の日本一に輝いたことが、メンタル面にも良い影響を与えていた。祝福のために首脳陣へ連絡すると「ルーティンを若い選手たちが踏襲している」と感謝されたという。投手陣ではベテランの石川に加え、奥川恭伸や高橋奎二ら若手が頭角を現し、2年連続最下位から頂点へ駆け上がった。「僕がやってきたことは間違いじゃなかったんだと思えた」と、残してきた功績に胸を張る。

ヤクルトの坂口智隆を含めて、残り2人となった現役の近鉄出身選手。四十路が迫ってきつつある猛牛戦士の闘姿が、1日でも長く球史に刻まれるよう願っている。(喜岡桜 / Sakura Kioka)

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