メジャー通算16勝の右腕が10年前に達成した「最も意外な完全試合」

メジャーリーグでは過去に23度の完全試合が達成されている。そのなかで「最も意外」と言われているのが2012年4月21日(現地時間)のマリナーズ戦でフィリップ・アンバー(ホワイトソックス)が達成した完全試合だ。アンバーは個人タイトルの受賞歴やオールスター・ゲームの選出歴どころかシーズン2ケタ勝利の経験すらなく、メジャー8年間で通算16勝23敗、防御率5.31という成績を残しているに過ぎない。キャリア唯一の完投と完封がなんと2012年の完全試合だったのだ。

メジャーリーグ公式サイトのデービッド・アドラー記者は20世紀以降に完全試合を達成した21人の投手を以下のように分類した(19世紀では1880年にリー・リッチモンドとジョン・ウォードの2人が達成)。

◆殿堂入り投手
サイ・ヤング(1904年)
アディ・ジョス(1908年)
ジム・バニング(1964年)
サンディ・コーファックス(1965年)
キャットフィッシュ・ハンター(1968年)
ランディ・ジョンソン(2004年)
ロイ・ハラデイ(2010年)

◆殿堂入りしていないサイ・ヤング賞投手
デービッド・コーン(1999年)
フェリックス・ヘルナンデス(2012年)

◆上記2つに当てはまらないオールスター投手
レン・バーカー(1981年)
マイク・ウィット(1984年)
トム・ブラウニング(1988年)
デニス・マルティネス(1991年)
ケニー・ロジャース(1994年)
デービッド・ウェルズ(1998年)
マーク・バーリー(2009年)
マット・ケイン(2012年)

◆上記3つにあてはまらない投手
チャーリー・ロバートソン(1922年)
ドン・ラーセン(1956年ワールドシリーズ)
ダラス・ブレイデン(2010年)
フィリップ・アンバー(2012年)

必ずしもメジャーを代表する好投手が完全試合を達成するとは限らないが、アドラー記者の分類に従えば、最後のグループに属するロバートソン、ラーセン、ブレイデン、アンバーの4人が「完全試合の意外な達成者」ということになる。このうち、ロバートソンは自己最多の14勝を挙げたシーズン、ブレイデンも同じく自己最多の11勝を挙げたシーズンに完全試合を達成。ポストシーズン唯一の完全試合として知られるラーセンも、この年のレギュラーシーズンでは自己最多の11勝を記録していた。

ところが、アンバーはキャリアハイやそれに近いシーズンに完全試合を達成したわけではない。2011年にキャリア唯一の規定投球回到達を果たし、9勝9敗、防御率3.75をマークしたが、完全試合を達成した2012年は5勝5敗、防御率6.44という成績。8月には先発からブルペンに配置転換され、11月にはウエーバーでアストロズへ放出された。冴えないキャリアを過ごした投手が冴えないシーズンに達成したことを考えると、「最も意外な完全試合」に相応しいと言えるのではないだろうか。

アドラー記者は最後に、完全試合を達成した投手の「ERA+」(球場の特性などを考慮した補正防御率。リーグ平均は100になる)のワーストランキングを紹介している。

81 フィリップ・アンバー
90 チャーリー・ロバートソン
93 レン・バーカー
94 リー・リッチモンド
97 トム・ブラウニング
99 ドン・ラーセン
101 ダラス・ブレイデン

やはり、アンバーは完全試合の達成者のなかでワーストの投手であり、「最も意外な完全試合」と呼んで差し支えなさそうだ。

© MLB Advanced Media, LP.