『後継者難』倒産 年度最多の404件、「死亡」と「体調不良」で8割超 (2021年度4-3月)

 2021年度(4-3月)の後継者不在に伴う『後継者難』倒産は404件(前年度比13.8%増)で、4年連続で前年度を上回り、調査を開始した2013年度以降では初めて400件台に乗せた。
 負債1,000万円以上の倒産(5,980件)の6.7%(前年度4.9%)で、構成比は1.8ポイント上昇した。
 産業別では、10産業のうち、6産業で前年度を上回った。最多がサービス業他の95件(前年度比28.3%増)で、『後継者難』倒産の23.5%を占めた。次いで、建設業88件(同17.3%増)、卸売業70件(同16.6%増)の順。
 資本金別では、1千万円未満が224件(構成比55.4%)。負債額別では、1億円未満が295件(同73.0%)と、小・零細規模を主体に推移している。
 要因別では、代表者の「死亡」が207件(前年度比22.4%増)、「体調不良」が132件(同3.9%増)で、この2要因で『後継者難』倒産の8割超(構成比83.9%)を占めた。
 中小企業では、代表者が経理から営業まで経営全般を担っている。ただ、コロナ前から業績低迷が続き、後継者育成や事業承継の準備まで手が回っていない企業も多い。代表者の高齢化が進むとともに、中小企業の後継者不在は一段と深刻になっている。代表者などに不測の事態が発生した場合、事業継続に影響を及ぼしかねない。
 コロナ禍の収束が見えないなかで、中小企業は事業継続のために後継者の育成や事業承継への取り組みが急務となっている。

  • ※本調査は「人手不足」関連倒産(後継者難・求人難・従業員退職・人件費高騰)から、2021年度(2021年4月-2022年3月)の「後継者難」倒産(負債1,000万円以上)を抽出し、分析した。

『後継者難』倒産、初の400件超、全倒産の6.7%を占める

 2021年度(4-3月)の『後継者難』倒産は404件(前年度比13.8%増)で、4年連続で前年度を上回り、調査を開始した2013年度以降で過去最多を記録した。『後継者難』倒産の構成比は、負債1,000万円以上の倒産全体(5,980件)の6.7%を占め、前年度の4.9%より1.8ポイント上昇し、過去最高を更新した。
 後継者の「有無」は、金融機関だけでなく、商取引上での与信においても重要な位置付けとなっている。特に、取引先の代表者が病気や死亡など不測の事態に陥った場合、自社の生産計画や受発注など事業運営にも支障を来す可能性が高い。
 コロナ禍の長期化で業績回復が遅れた中小・零細企業では、後継者育成や事業承継への準備が後回しになるケースが少なくない。また、高齢の代表者ほど過去の成功体験から抜け出せず、長期の経営ビジョンを打ち出しにくい。さらに、設備への投資も躊躇し、生産性や収益低下などのリスクも生みやすい。

後継者難

【要因別】「死亡」と「体調不良」で8割超

 要因別は、最多が代表者などの「死亡」の207件(前年度比22.4%増)で、調査を開始した2013年度以降で初めて200件台に乗せた。『後継者難』倒産に占める構成比は51.2%で、前年度(47.6%)より3.6ポイント上昇した。
 「体調不良」は132件(前年度比3.9%増)で、4年連続で前年度を上回った。
 代表者などの「死亡」と「体調不良」は合計339件(前年度比14.5%増)で、2020年度の296件を超し、過去最多を更新。『後継者難』倒産に占める構成比は83.9%で、前年度の83.3%より0.6ポイント上昇した。
 このほか、「高齢」が47件(同67.8%増)で、2年ぶりに前年度を上回った。
 代表者の高齢化が進むなかで、代表者などの死亡や体調不良は、事業継続に大きな支障を来すこととなる。

後継者難

【産業別】最多はサービス業他の95件、6産業で増加

 産業別は、10産業のうち、農・林・漁・鉱業、製造業、金融・保険業、運輸業を除く6産業が前年度を上回った。
 最多は、サービス業他の95件(前年度比28.3%増、構成比23.5%)で、2年ぶりに前年度を上回り、過去最多を記録した。
 このほか、不動産業24件(前年度比33.3%増)は4年連続、建設業88件(同17.3%増)、小売業42件(同7.6%増)は3年連続、卸売業70件(同16.6%増)は2年連続、情報通信業13件(前年度9件)は5年ぶりに、それぞれ前年度を上回った。
 一方、農・林・漁・鉱業4件(同6件)は3年ぶり、製造業56件(前年度比5.0%減)、運輸業12件(前年度14件)は2年ぶりに、それぞれ前年度を下回った。
 金融・保険業はゼロ(同1件)で、2年ぶりに発生がなかった。
 業種別では、飲食料品卸売業が22件(前年度比22.2%増)で5年連続、飲食料品小売業が11件(同83.3%増)で2年ぶりに、それぞれ前年度を上回った。また、機械器具卸売業が22件(同100.0%増)で倍増、受託開発ソフトウェア業(3→8件)を含む情報サービス・制作業が13件(前年度比44.4%増)と、それぞれ増加した。
 一方、コロナ禍で動向が注目される飲食業が20件(同20.0%減)、宿泊業1件(同75.0%減)と、それぞれ前年度を下回った。

後継者難

【形態別】破産の構成比が92.0%

 形態別は、最多が「破産」の372件(前年度比14.4%増)で、過去最多を更新した。『後継者難』倒産に占める構成比は92.0%で、前年度の91.5%より0.5ポイント上昇。
 「会社更生法」は2013年度以降、発生がない。「民事再生法」は前年度と同件数の1件。
 『後継者難』倒産では、後継者育成や事業承継への取り組みが後回しになっており、代表者に不測の事態が起こった場合、事業継続が困難となり、ほとんどが「破産」を選択している。

後継者難

【資本金別】1千万円未満が初の200件台に

 資本金別は、1千万円未満が224件(前年度比14.8%増、前年度195件)で、初めて200件台に乗せた。『後継者難』倒産に占める構成比は55.4%(前年度54.9%)だった。
 このほか、「1千万円以上5千万円未満」が169件(前年度比14.9%増)、「1億円以上」が2件(前年度1件)と、企業規模を問わず、後継者の育成・事業承継が大きな課題となっている。

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