小・中学は軟式か硬式か、高校は強豪に入るべきか 元楽天・鉄平さんが考える“進路選択”

楽天などで活躍した土谷鉄平氏【画像:(C)PLM】

子どもをリトルリーグでプレーさせるなら「肩肘のケアを」

プロ野球選手を夢見る子どもやその保護者に、中日、楽天、オリックスでプレーした鉄平さんが「プロ野球選手になる方法」を伝授。アカデミーコーチの経験を基に、どんな子どもがプロになるのか、プロ野球選手になる方法という“そもそも論”から、親としての心構えなど「鉄平式プロ野球選手の育て方」を全6回に分けて語ります。第2回のテーマは「軟式か硬式か。高校は強豪校に入るべきか。悩める進路の話」です。

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今回のテーマは進路の話。野球少年たちが抱える悩みの中で一番難しい問題です。どの道が正解とも言い切れませんが、判断材料の一つとしてご一読いただければと思います。私自身は小学、中学で軟式野球をしていました。高校の進路を決める際は、プロを目指すのであれば津久見高校、勉強をやる場合は別の高校と、基本的には2択でした。結果的にはプロを目指すと決めたので、大分県立津久見高校に進学することになります。今振り返ってみても、その選択は正解でした。自分で決めた道なので、プロ野球選手になれていなかったとしてもその選択に後悔することはなかったと思います。

どちらにもメリット、デメリットはありますし、どちらに行ったからプロ野球に近くなるというのもないので優劣はありません。強いて言うなら少年野球(軟式)がおすすめです。リトルリーグ(硬式)は、硬式球に慣れるという点で大きなメリットがありますが、成長期が終わっていない、始まってもいない子どもたちにとっては肩肘への負担が大きい。リトルリーグを選ぶならそこはケアしてほしい。突き指などの衝撃も軟式の比ではないので。小学高学年にして野球肘で投げられませんとならないように。

少年野球を選んでも、リトルリーグとの差を埋められないほどではありません。中学、高校で軟式と硬式の差は十分に埋められます。そういった点では、怪我のリスクが少ない少年野球を選ぶ方が将来的な選択の幅も広がるのでいいかもしれません。そんな少年野球のデメリットをあげるとすれば、最終的にはプロ野球選手(硬式)を目指すという視点で、戦い方や技術が硬式と異なること。ただし、それも将来的に埋められるため強く意識せず、頭の片隅に置いておくくらいでいいと思います

私たちのころは、中学の軟式野球部も結構盛んでしたが、現在は野球に打ち込める環境が整っていない場合もあります。そうであるなら練習時間の確保、環境も整っている硬式野球に入ったほうがいい。地域によっては軟式野球部が盛んなところもあるので、その場合は部活でも大丈夫でしょう。ただ、中学から硬式に行ったからといってプロに近くなるかと言われると、そこまででもない。プロ野球選手には中学から硬式に行った人が多いですが、実力がある人が硬式を選ぶ風潮があったのだと思います。軟式だから将来的にダメとか、硬式だから良いというのは、ありません。

どちらも選べる、かつ野球に集中できる環境であれば、自分がやりたい方に進みましょう。環境が整っている、野球に打ち込める方を選ぶ。友達がいる方に進むのもモチベーションに関係してくるので、一つの判断材料です。硬式野球チームに入る場合は中学校では陸上部に入って、野球の練習がない日は走ることを学ぶのがおすすめです。

「最も難しい」高校選択、試合に出られる学校進学も選択肢の一つ

高校の進路選択が一番難しく、よりプロ野球を意識した選択をしなければいけません。強豪校に行けばものすごい練習量と、さまざまな設備がありますが、その分競争相手も多い。中学時代はエースで4番だった選手が強豪校に入学するも、3年間で1度も試合に出られないというのはよくある話です。そういうのをはねのけるくらいの覚悟がないと、プロ野球選手になるのが難しいのも事実です。

強豪校で試合に出られないくらいなら、強豪校とされていない高校に入学して試合に出るという選択もあります。そこで活躍すればプロのスカウトが見に来てくれます。もちろん、強豪校の方が注目されやすいというメリットはありますが、スカウトは基本的に「良い選手」を見に来ます。自分が試合に出られそうな高校を選ぶのも、選択肢の一つです。そういう選択をして結果的にプロ野球選手になっている人もいます。試合に出ていればすぐにプロ野球選手とはいかなくても、大学や社会人野球からも声がかかりやすい。試合に出ていないことには、評価のしようがありませんから。

高校卒業後は、どこに進もうともデメリットはありません。高校時代と一緒で良い成績を残せば、スカウトが評価してくれます。高校よりもプロへの道は近くなっているので、自分との戦いです。どこに進もうと大して変わらない。ただ、大人になるのでいろんな誘惑も出てくる。高校卒業後もプロ野球選手になりたいという思いがあるのなら、どれだけ自分に厳しくできるかだと思います。

最後にまとめると、進路選択において違いがあるのは強いて言えば小学校だけです。リトルリーグに行くのであれば、怪我のリスクを頭に入れてケアをするようにしましょう。その他の進路選択については環境の要素、どれだけ野球に取り組めるかが重要です。周りの思惑もありますが、最終的には本人がどうしたいかで決めるべきです。

◇土谷鉄平(つちや・てっぺい) 1982年12月27日生まれ、大分県大分市出身。津久見高校から2000年ドラフト5位で中日に入団。2006年に楽天へ移籍し、2009年に打率.327で首位打者に輝いた。オリックスへの移籍を経て2015年限りで現役引退。引退後は楽天アカデミーコーチ、2軍外野守備・走塁コーチ、1軍打撃コーチを務めた。現在は球団を離れ、野球解説者として活躍の場を広げている。(「パ・リーグ インサイト」編集部)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

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