「低い山、甘く見ないで」 神奈川の山岳遭難高止まり 県警、登山計画書の提出呼び掛け

道に迷う登山客が多いため、案内が設置された「大界木山」の登山道(2021年12月撮影、ヤマップ提供)

 「密」にならないレジャーの一つとして登山に根強い人気が集まる中、神奈川県内での山岳遭難事故が高止まりしている。その背景に低山が多いという、山岳県とは異なる神奈川ならではの事情がある。

 県警は「『低い山』だからといって甘く見ないで」と注意を喚起するとともに、装備の充実や、捜索の手掛かりになる登山計画書の提出を呼びかけている。

 県警地域総務課によると、2021年に起きた山岳遭難は135件。遭難者は153人で、うち6人が亡くなった。件数、人数とも全国3位だった20年と比べて減少したものの、近年は高水準で推移している。

 標高2千メートル級が連なる日本アルプスを抱える長野県や、厳冬期の極寒山岳地として知られる大雪山連峰(旭岳、標高2291メートル)などが有名な北海道と異なり、神奈川は標高千メートル以下と、標高1500メートル以下の低山が多いという。

 その低山でなぜ山岳遭難事故が多いのか-。

 登山地図GPSアプリを運営するヤマップ(福岡市博多区)で広報を担当する上間秀美さんは「『低いから大丈夫』という過信と、整備が行き届いていない山の環境が相まって『道迷い』が多発している」と分析する。

 県内の山々は、首都圏から車や公共交通機関で1~2時間程度と近く、初心者でも楽しめる標高のため、「十分な装備を準備せず、気軽に入山してしまう例が多い」と指摘。受け入れる山も、案内板や道しるべがなかったり、登山道が整備されていなかったりする場所が少なくないという。

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