日本は「食べ物が美味しすぎ」 体重4.5キロ増…元鷹ムーアが語るNPBの学びと失敗談

インタビューに応じたレンジャーズのマット・ムーア【写真:小谷真弥】

元ソフトバンクでレンジャーズのムーアにインタビュー「日本で素晴らしい時間」

元ソフトバンクで、レンジャーズのマット・ムーア投手がFull-Count編集部のインタビューに応じ、日本の野球への思いを語った。ソフトバンクでは2020年に11試合先発して6勝(3敗)をマーク。巨人との日本シリーズでは7回無安打無失点に抑えて日本一にも貢献した。インタビュー前編では日本野球から学んだことや思い出など大いに語った。

ソフトバンクに所属したのはコロナ禍で揺れた2020年の1年のみ。それでもムーアにとっては刺激たっぷりの日々だった。

「いい時間を過ごした。2020年は自分の野球人生で一番気に入っているシーズンの1つだ。日本の野球はテレビで見ていただけだったが、実際に経験できたし、いいチームでプレーできた」

2007年ドラフト8巡目でレイズに入団したムーアはマイナーで圧倒的な成績を記録。2011年のMLB公式サイトの有望株ランキングでトラウト、ハーパーに続く全体3位の高評価を受けた。2012年には期待通りに11勝を挙げると、2013年にはオールスター戦に選出されて17勝。だが、2014年に左肘のトミー・ジョン手術を受けて以降は成績が伸び悩んでいた。2019年はわずか2試合登板。ここでソフトバンクからオファーを受け、NPBでの挑戦を決めた。

日本野球から学んだことは多かった。「日本では打者から三振を取りにくい。MLBでは2ストライクでもノーストライクの時と同じスイングをしようとするが、日本では球をインプレーにしようとする」と粘り強い打撃をすると指摘。その中で多くのことを学び取ったようだ。

「僕の場合はオフスピード系の球をいろんなカウントで使うことだろうね。これまでとより違うカウントで使うこと。それと守備も少し良くなったかな。日本選手は平均的にこちらより一塁への走塁が速いから、守備がしっかりできていないといけなかった」

メジャー昇格したレンジャーズのマット・ムーア【写真:小谷真弥】

日本での生活「4.5キロほど太ったよ。食べ物が美味しすぎて」

日本での思い出もたくさんある。コロナ禍に悩まされたシーズンだったが、福岡での生活は「最高だった」という。

「コロナがちょうど始まった頃だったけど、とても楽しかったよ。日本の人たちはとても礼儀正しくていつでも助けてくれて、僕ら(妻と自分)が困った時はただ尋ねればいいという感じだった。どこかの段階で日本にまた遊びに行きたいと思っている」

「カレーライスが好きだった。あとはラーメン。そして豚カツ。日本にいる間に10ポンドぐらい(4.5キロ)ほど太ったよ。食べ物が美味しすぎて。白米がとてもおいしかったし、焼肉スタイルのステーキも。体重管理が難しかった」

もちろんソフトバンクでのプレーは今の自信につながっている。日本での一番の思い出は「やっぱり日本シリーズ優勝かな」と即答。続けて「それまで優勝したことがなかったら、あの時に初めて優勝する感覚を実際に味わったよ」と笑顔で続けた。勝つ喜びは何事にも変えられない経験となっているようだ。

昨季はフィリーズでメジャー復帰し、レンジャーズに所属する今季は4月16日にメジャー昇格。中継ぎとして3試合登板して防御率1.69。計5回1/3で7奪三振と上々のスタートを切った。

「ホークスのことは今も追っているが、今季はいいスタートを切っているようだね。日本でとても素晴らしい時間を過ごした。仲間が恋しいよ」

ソフトバンク退団から2年。それでもメジャー通算56勝左腕はホークスでの思いを胸にメジャーでの活躍に繋げていく。(小谷真弥 / Masaya Kotani)

© 株式会社Creative2