増加する期日前投票とメディア報道 渡邉秀成

2022年夏には参議院選挙が予定されています。
選挙に向けて各政党の党大会等の話題がテレビ等で報道されています。
憲法改正等についての話が自民党党大会で出るなど、
参議院選挙の論点等が徐々に流れ、
選挙の方向性がつくられてくる時期になってきました。

国や地域の方向性を決める選挙であるにも関わらず、
国政選挙、地方選挙ともに投票率が低下傾向にあります。
グラフを作成してみると国政選挙、地方選挙ともに投票率が低下傾向にあることが確認できます。

図1

全体的に投票率は低下しているのですが、
期日前投票を利用する有権者の数は増えています。
参議院選挙において期日前投票を利用した人の割合を見てみましょう。
直近の参院選において投票者に占める期日前投票者の割合は、
3割以上になっています。

図2

この期日前投票の利用者割合を都道府県別に観察してみます。
都道府県ごとにグラフ化したものが下記になります。

図3

2004年参院選から2021年衆院選までの選挙における期日前投票利用者割合は
都道府県別に見ても増加傾向にあることがわかります。

一方、毎回選挙の投票率が全国トップレベルある鳥取県、島根県においては、
期日前投票の割合はそれほど高くないことがわかります。

都道府県ごとに投票率は高いが期日前投票制度の利用者割合は少ない地域と、
投票率は低いが、期日前投票利用割合が高い地域があるように見えます。

全体的に見ると期日前投票制度を利用する有権者は増えており、
これからも利用者が増えることが予想されます。

これは選挙の投票日が日曜日に設定されているので、
日曜日には各自の予定を優先させたい、
日曜日はゆっくりと過ごしたいので、
投票日前に投票を済ませておこうという人が増えているのかもしれません。

投票率を向上させるという狙いで、
ショッピングセンター、駅等に
期日前投票ができる場所が増えてきており、
通勤通学毎日の買い物等のついでに投票する環境が整ってきているので、
期日前投票制度を利用する人は今後も増えることと思います。
直近の第49回衆議院選挙では6000弱の期日前投票所がありました。

図4

このように、
期日前投票をする人が3割以上になりますと、
選挙期間に入る前から、
どの政党、候補者に投票するのかを決めている有権者数がふえているということも言えそうです。

図5 投票決定時期

全体の投票率が低下傾向にありながら、
期日前投票制度を利用する人が多くなると、
選挙の当落は選挙告示日には決まっているという、
選挙に関する格言のようなものは、
より真実味を帯びてきます。

そして現在有権者の約4割弱が支持政党を持ちません。
NHK選挙WEBサイトより支持政党なしと回答した割合を、
2009年11月から2022年3月までをグラフ化したものが下記になります。

図6*https://www.nhk.or.jp/senkyo/shijiritsu/ より

このような有権者の投票行動を考えると、
選挙期間のみならず
通常時におけるマス・メディア報道等にも
各政党を取り上げる時間、内容等、
公平性に関する配慮をこれまで以上にする必要が出てきているように思います。

例えば、各政党関係者等が出演する番組では、
公的機関が発表している統計データを画面表示し、
発言者がデータに基づいて発言をしているかどうか?
過去に公約していたことが実現できているかどうか?等
視聴者がチェックできる体制があると良いのかもしれません。

今回は増える期日前投票について見てきました。

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