【MLB】バットを手にしなかった試合前練習 鈴木誠也が“用意周到”に決めたメジャー初盗塁

メジャー初となる二塁盗塁を決めたカブス・鈴木誠也【写真:Getty Images】

第2打席は追い込まれてから真骨頂の対応力で右前に運んだ

■カブス 21ー0 パイレーツ(日本時間24日・シカゴ)

【実際の映像】「なんて奇抜」とファン驚愕 鈴木誠也が外角のボール球を右前に弾き返す実際の映像

カブスの鈴木誠也外野手が23日(日本時間24日)、本拠地リグレー・フィールドでのパイレーツ戦で今季初の3安打3得点と躍動。2打席目に2試合ぶりの打点を稼いだ直後には、メジャー初となる二塁盗塁を決めた。4連敗中だったチームは、今季最多の23安打を積み上げ、本拠地では1987年6月3日のアストロズ戦以来となる21得点での圧倒的勝利を収めた。

4連敗中だったチームに勝利への流れを作ったのが3本のヒットを連ねた「2番」鈴木だった。1回裏の第1打席、内角高めに切れ込んでくる93マイル(約153キロ)のシンカーを引っ張った。飛びつく三塁手の右横を抜く強烈な打球で左前へ運んだ。後続の連打で先制のホームイン。

2回の第2打席は、巧打と足で試合を決める大量点を呼び込んだ。1死一、三塁の場面。先発右腕のトンプソンが投じた外角へのカットボールを2球続けて空振り。追い込まれたが、そこから真骨頂の対応力で2本目を出した。

「追い込まれるまではしっかり振りたいなと思っていたけど、当たらなかったんで。このままいっても多分、三振するなと思ったので。バットに当てられる状況を作りたいなっていうことで、ああいう形になったんですけど」

3球目、外角低めのボールゾーンへ小さく曲がるカットボールに対し、ノーステップでタイミングを取り、体勢を崩されながらもバットの先で拾った。一、二塁間を破り三塁走者を本塁に迎え入れる適時打。「なんとか当てられれば1点は入るかなと思って。なんとか当たって、結果ヒットになったのでよかったです。最低限のことは出来たのかなと思っています」。それでも、安堵感などなかった。2試合ぶりの打点を記録した直後の塁上で鈴木は密かに企てていた。

試合前練習でリードの歩幅確認とスタートを繰り返した

「先の塁に詰められるとピッチャーも嫌だと思うし、サインもサインだったので積極的に行けたらなと思っていた。一発で(スタートが)切れてよかったです」

ハリス三塁コーチから出されたのは、盗塁を一任する「グリーンライト」。初回の出塁後、モーションの大きいトンプソンのフォームをつかんでいた鈴木は、次打者の初球に完璧なスタートでメジャー初盗塁を決めた。

伏線があった。

試合前の練習ではバットを手にすることなく、一塁ベースへ直行。リードの歩幅確認とスタートを繰り返した。一、三塁からの二盗を決められなければ、併殺でそのイニングが終了した可能性もあっただけに、積極果敢な盗塁が試合を決める大量8得点への“足がかり”となった。

5回の第4打席、先頭で回ると、まだ芽吹かないツタで覆われた右翼フェンス直撃の二塁打を放ち、後続の安打で3度目の生還。2度目の打者一巡の猛攻のお膳立てをすると、この回2度目の打席を迎えるところで交代した。

「こういう試合の次は何か起きることが多い」

18日(同19日)からの本拠地開催試合は、小雪が舞うなど悪天候と寒さにたたられたが、この日は晴天に恵まれ試合開始時の気温は約23度。今季最多の3万9917人の観客は、1906年と1969年の19対0を上回る球団史上初の21得点での完封勝利を満喫した。

猛打で連敗を4で止めた派手な勝利には落とし穴もある。鈴木は自身の打撃と重ねるように言った。

「あした悪いかもしれないですし、わからないので、気を抜かずしっかりやりたい。こういう試合の次の試合というのは何か起きることが多いので、気を引き締めてまたあした臨みたいなと思います」

己と野球というゲームを知る鈴木誠也の気持ちは切り替わっていた。(木崎英夫 / Hideo Kizaki)

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