知床半島の事故受け安全対策徹底 栃木県内の観光船事業者

中禅寺湖畔に係留する遊覧船「男体」=25日午後、日光市中宮祠

 知床半島沖で起きた観光船事故は、栃木県内で遊覧船や観光船を運航する事業者にも衝撃を与えた。25日までに子どもを含む11人の死亡が確認された事故。事業者は「同じ水上の乗り物を運航する者として真摯(しんし)に受け止めている」などとし、安全対策の再徹底を図っている。

 奥日光の中禅寺湖で遊覧船を運航している東武興業(本社・東京都)は25日、社内に安全確保の再徹底を促す通達を出した。24日に国土交通省が全国の旅客船事業者に対して船体の点検や安全管理の徹底を要請した文書を受けた対応だ。

 同社は出航前に必ず船体やエンジンを点検するほか、運航管理者と船長、遊覧船支配人の3人が協議し、湖上の風速や波の高さなど状況に応じて運航の可否を1時間おきに判断している。同社取締役の加藤哲也(かとうてつや)日光事務所長は「お客さまの安全を第一に今後も気を引き締めて取り組んでいく」とした。

 水陸両用バスでダム湖を巡る「湯西川ダックツアー」(日光市西川)を運営するNPO法人は事故後、ドライバーに悪天候時の運転中止などを一層慎重に判断するよう呼び掛けている。

 車両は出発前のメンテナンスのほか、月2回ほどの定期整備は欠かさない。ドライバーが気付いた時点で点検を実施することも推奨している。

 一方でコロナ禍で厳しい営業が続く中、事故は書き入れ時のゴールデンウイーク(GW)を前に起きた。

 バスが巡回するダムは海上ほど厳しい自然環境ではないとした上で、NPOの60代女性理事は「船のイメージが先行し、気軽に楽しもうと思われにくいのでは」と不安を口にした。

 また同市鬼怒川温泉郷で「鬼怒川ライン下り」を運航する鬼怒高原開発も船の点検作業など毎日の安全管理を今後も徹底するとした。

© 株式会社下野新聞社