サザンオールスターズを率いる桑田佳祐さんが中学時代に通ったパン店「清月」(神奈川県茅ケ崎市東海岸南)が7月、64年の歴史に幕を下ろす。地域住民やファンから愛される老舗は「サザンの聖地」とも称され、全国からファンが足しげく通う。店主の高橋ツナ子さん(88)は「元気でみなさんに感謝の気持ちが伝えられるうちに閉店したい」と話し、重ねてきた歴史に思いをはせている。
JR茅ケ崎駅からサザンビーチちがさきに伸びる「雄三通り」にその店はある。静かな4月下旬の早朝、店の前にはハザードランプを付けた車が何台も停車し、散歩途中の夫婦やサザンファンらが店の前に並び、思い思いの一品を買い求める。
高橋さんは会計の際、買い物客にショーケースの上で、そっとコースターを手渡す。「一九五八~二〇二二 清月 六十五年間 ありがとね」と印字されたコルク製コースターだ。店を思うファンがお客さんに渡してもらうために作ったという。朝4時半過ぎのオープンからわずか2時間ほどで、店に並んだ総菜パンは全て売り切れた。
北海道から訪ねてきたというサザンファンの男性は「先日も来たのですが、やはり今年で最後ですから。また来てしまいました」とほほ笑んで見せた。店の入り口には閉店予定日を知らせる案内が貼られている。掲げてからは、売り切れる時間が日に日に早まっているという。