「原点に立ち返るべき」レクナ・中村氏 核軍縮テーマに講演 長崎で市民講座

核軍縮をテーマに講演する中村准教授(左)と西田教授=長崎市平野町、長崎原爆資料館

 長崎大核兵器廃絶研究センター(RECNA=レクナ)の中村桂子准教授らが30日、長崎市内であった市民講座で核軍縮をテーマに講演。ロシアがウクライナ侵攻で核使用を示唆し、核軍縮機運が大きく後退する中、中村氏は「『核兵器が二度と使われないためには廃絶しかない』という被爆地が長年訴えてきた原点に(国家や市民が)立ち返るべき」と訴えた。
 中村氏は「存在する限り、使われるリスクがある。核兵器で安全を保つのは幻想に過ぎない」と強調。核抑止政策から脱却するため非核兵器地帯構想など具体的な議論を求めた。
 一方、元外務官僚で同大の西田充教授(軍備管理・軍縮・不拡散)は、ロシアに加え中国の核戦力増強や北朝鮮の核開発など日本を取り巻く安全保障環境の厳しさを指摘。「核廃絶という目標に向け、安定的に徐々に削減していくしかない」と当面は核の傘に依存する安全保障政策を堅持する必要性を説いた。
 6月に核兵器禁止条約の第1回締約国会議、8月には核保有国も参加する核拡散防止条約(NPT)再検討会議が開かれる。
 西田氏は、核軍縮義務と引き換えに米ロなど5カ国に保有の特権を認めたNPTに対し、核禁条約は「『核兵器は悪』と非常に強い規範を持つ」と説明。「両者の長所を生かしつつ、短所を手当てすることも必要」とした。初の締約国会議の重要な論点として「核軍縮検証」を挙げた。
 中村氏はこれに加え、核実験などによる核被害者の援助と汚染された地域の環境修復に向けた議論に期待。「この局面で会議を開き、核兵器の非人道性に焦点を当てることは重要」と語った。
 市民講座は、県と長崎市、長崎大でつくる核兵器廃絶長崎連絡協議会の主催。対談形式であり、オンラインを含め計約120人が聴講した。


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