憲法施行75年 長崎で集会 改憲派「国民を守れるか」 護憲派「どさくさの議論」

「今の憲法で本当に国民を守れるか」との声が上がった改憲派の集会=長崎市内のホテル

 日本国憲法は1947年の施行から75年。新型コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻を受け、国会で改憲に前向きな勢力が勢いを増す。憲法記念日の3日、長崎市内で開かれた集会で改憲派は「今の憲法で本当に国民を守れるか」と9条改正や緊急事態条項の新設などを主張。一方、護憲派は「どさくさの中での安易な議論はあってはならない」と危機感を募らせた。

 改憲派の「美しい日本の憲法をつくる長崎県民の会」が主催した「憲法フォーラム」。東京の全国集会の模様がライブ配信され、「(改憲に)挑戦し続けなければならない」と決意を語る岸田文雄首相のビデオメッセージに、長崎会場の参加者約60人から拍手が湧いた。
 県民の会の坂井俊之共同代表はあいさつで、ウクライナ情勢や日本を取り巻く安全保障環境の厳しさを挙げ、「(私権制限を含め)国民を安全に避難させるのに、今の憲法ではむしろ制約があるのでは」と改憲の必要性を訴えた。
 コロナ禍とロシアのウクライナ侵攻の「非常事態」に伴い国会の改憲論議が活発化。自民党の改憲案4項目のうち、とりわけ、大規模災害や他国からの侵略、感染症などに対応する緊急事態条項の新設は国民の間にも賛成の声が多い。坂井氏は「憲法改正の機はすでに熟した」とみる。
 加えて、北村芳正事務局長(62)は「外国軍隊の侵略に対し(日本は)撃退できるのか」と語り、「9条への自衛隊明記」も求めた。

「ながさき9条フェスタ」の終了後、改憲反対を訴えながらアーケードを行進する護憲派の市民ら=長崎市浜町

 一方、護憲派は「ながさき9条フェスタ」(実行委主催)を開き、約300人が参加。立憲民主党の辻元清美前副代表が「憲法は人権や生活を守るもの。時の政権が人権を制限し、権力を好きに使うためではない」と熱弁を振るった。
 緊急事態条項は、危機への対処を優先するあまり、国民の人権の制約につながる懸念がつきまとう。辻元氏は「プーチン大統領と同じように野党も立法府も無力化し、独裁化する」と危惧。「カッと熱くなっている中で国の根本の定めを変えてはいけない」と訴えた。
 自民党は4月、相手国領域内でミサイル発射を事前に防ぐ「敵基地攻撃能力」を「反撃能力」と改称し、政府に保有を提言。一部政治家からは米国の核兵器を国内に配備する「核共有論」まで飛び出した。
 「市民運動ネットワーク長崎」の門更月事務局長(67)は「国民が受け入れやすいものから始め、9条を変える取っ掛かりにするつもりでは」と神経をとがらせる。被爆者の山川剛さん(85)は「ロシアが『特別軍事作戦』と称して侵攻したように、戦争はうそから始まる。注意深く見定めないといけない」
 「被爆地長崎に生まれ育った身として9条は守っていきたい」。元高校生平和大使で、鎮西学院大1年の大澤新之介さん(18)はそう感じる半面、他国からの侵略への不安もある。危機にあおられるように広がる改憲ムード。「自分を含めた若い人が知識を持ち、憲法の問題を考えることが必要」と語った。

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