オシムの言葉

 〈…過去の日本代表チームが、他の国の模倣をして『行き過ぎた』部分があったために、それを修正しているだけのことです。日本のサッカーは今のままでは“日本人のサッカー”にたどり着くことができません〉▲サッカーの「日本化」はこんな言葉で語られていた。サッカーの世界的名将として知られ、2006年からは日本代表の監督も務めたイビチャ・オシムさんが亡くなった▲「日本人にはよいサッカーをするための資質が備わっている」。俊敏さ、勤勉さ、組織力、規律を重んじる責任感。数多くの美点を生かして、この国にふさわしいサッカーを、と唱えた▲彼の訃報が「憲法記念日」の紙面に載ったのは、偶然の巡り合わせでしかない。サッカーを自分勝手に「憲法」に置き換えて、前のめりの改憲論議に対する“警鐘”に聞こえると書いたら、飛躍が過ぎるよと言われるだろうか▲脳梗塞で倒れ、奇跡的に回復したオシムさんは退院の日、こんな言葉をファンに送った。「スタジアムに足を運び、選手たちにプレッシャーをかけてください。もっと走れ、もっとプレーのスピードを速く-と。そして、よいプレーには大きな拍手を」▲悪い癖だと知りつつ、スタジアムを「投票所」、選手を「政治家」に置き換えてしまう。参院選が近づいている。(智)

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