同じ市営墓地の負担差は不公平? 佐世保市議会から疑問の声

市民の負担を巡って「不公平だ」との声が上がる永代墓地。階段などは市民の生活道路になっているという=佐世保市内

 同じ市営墓地で負担に差が出るのは不公平-。佐世保市が管理する「永代墓地」と「市民霊園」の市民の使用料を巡り、市議会から疑問の声が出ている。一度きりの支払いと契約の間払い続けるシステムに分かれており、費用面で市民の負担に大きな差があるからだ。税金の支出も絡み、市議会は改善を求めるが、市は二つの墓地は状況が違うとして変更する考えはなさそうだ。
 3月の市議会文教厚生委員会。問題提起した大村哲史議員が使用料の差がある上、永代墓地の修繕に税金を充てていることを指摘し「不公平だ。根本的なやり直しを」と求めた。市は、修繕場所が市民生活に密着していることを上げ、妥当性を説明した。

墓地の使用料

 市生活衛生課によると市営の墓地は2パターン。昭和初期に利用開始した永代墓地は市中心部の名切、高梨、山手各地区の斜面地にあり墓の数は615。1929(昭和4)年制定の条例に基づき、使用料は1平方メートル当たり250円。使用者は契約時に区画面積に応じて750円(3平方メートル)~7500円(30平方メートル)を永代使用料として支払えば、承継可能な限り使用できる。ここ30~40年は「斜面地の不便な場所」であることなどを理由に利用を受け付けておらず、修繕などのため税金の支出だけが続いている。
 これに対し、5128の墓がある市民霊園は使用者から年換算で3300円~4900円の使用料を徴収。維持管理の財源にもなっている。二つの墓地を30年間使い続けた場合の最低額を比べると、永代墓地は750円、市民霊園は9万9千円。132倍もの差が出る計算だ。
 二つの墓地の使用を公平にするには、双方とも使用料を取るなど、対応を統一するのが分かりやすい。だが市は永代墓地の特殊な事情を理由に現状変更に慎重な立場だ。
 同課によると、時代とともに永代墓地の近くには民家が建ち、墓地内を通って行き来する市民が増えた。市が税金で修繕するのは、永代墓地敷地内の樹木の伐採や落石の危険がある斜面、劣化したブロック塀の補修などで「所有者として危険な箇所を直す責任がある」(同課)。修繕箇所は毎年あり、金額は3カ所で数百万円程度。墓地の使用料をとって“生活道路”として使われている場所の維持管理に充てるのは難しいという。主に使用者しか行き来しない市民霊園とは事情が異なるとして、市は支出の正当性を説明する。
 県立大地域創造学部の綱辰幸学部長(地方財政論)は、万一の事故を防ぐためには定期的な修繕が必要だとした上で「公平性を考えると市民霊園の使用料の減額や、長期的には永代墓地の使用を続けるかどうかについても検討が必要になってくる」としている。


© 株式会社長崎新聞社