株主優待銘柄を選ぶ・選ばないポイント、買うべきタイミングを見極める方法とは?

現在、日本には3,800社ほどの上場企業があり、そのうち約1,470社が株主優待制度を実施しています。つまり上場企業の3社に1社は株主優待制度があることになります。
※上場企業数、株主優待実施企業数、いずれも2022年4月時点

それらの企業の中から、株主優待銘柄はどのように選べばよいのでしょうか?


株主優待があれば何でもいいという訳ではない

株主優待といえば、株を保有していることで企業から自社製品や自社のサービス券などが提供されますが、ついつい株主優待を受け取ることが目的になってしまいます。すると、株主優待を受け取ったのはいいけれど、結局「利用できずに有効期限が切れた…」なんてことになりかねません。

株主優待を選ぶポイントは、「本当に欲しい株主優待なのか?」です。長年、株主優待投資をしてきた私( @Pelican_Blog )が、いつも株主優待銘柄を選択する際のプロセスはこちらです。

1. 本当にその株主優待が欲しいのか自問自答
2. 最低でも5期の業績を見て極端に業績が悪化していないのか、配当金を含んだ株主還元が適切なのかをチェック
3. 株価が割高になり過ぎていないかをチェック
4. 優待株は権利落ちが比較的大きいとされているので、今回は見送った方がいいのでは、と自問自答
5. その企業が過去5年以内に株主優待の「改悪」をしていないかをチェック
6. 投資する資金は余裕資金なのかを自問自答

それでは順番に解説したいと思います。

株主優待銘柄を選ぶ6つのプロセス

1番目の自問自答が、実は最も大事なプロセスです。株主優待は、使うことで利益を受けられるものです。受け取った株主優待は生活の中で本当に役立つものなのかを確認することで、取得することが目的となるのを防ぎます。

2番目に、5期分の業績を見て、業績が上昇傾向なのか横ばいなのか、そして株主優待が会社の負担なっていないのかを確認します。株主優待実施企業は株主優待自体を交際費として損金処理している場合がもっとも多いため、業績が悪化すると株主優待を取りやめてしまう企業も少なくありません。業績が下落傾向の株は避けるべきですし、しっかりと利益を確保しているかのチェックは必須と言えます。

3番目の株価が割高になり過ぎていないかは、予想PERで判断します。20倍を超えると割高という印象を受けます。予想PERが割高の場合、株価が大きく値下がりする可能性を含んでおり、株主優待を貰ったとしても資産価値が目減りしてしまうと本末転倒ですからね。

4番目は、買うタイミングのことです。権利落ちに大きく下がる傾向を考えると、買うタイミングは権利確定直前の駆け込みではなく、権利落ちを狙って次回の株主優待から受け取る為に仕込むことが重要です。これで高値掴みの確率をグンと減らすことが出来ます。

5番目は、過去5年の「適時開示履歴」において株主優待制度が改悪されていないかを調べます。あくまで傾向ですが、過去5年以内に改悪がある企業は、更なる改悪や廃止の可能性が比較的高いと感じています。ちなみに改悪とは、同じ株数を保有していても受け取れる商品やサービスが少なくなることで、長期保有制度の導入については改悪と判断はしていません。

6番目は、株主優待を目的にした投資に限定したものではありませんが、余裕資金で投資することは必須と考えます。必要に迫られて売らなければならない資金は、投資には不向きですからね。

機関投資家は一定の期間に結果を出さなければいけないため、決算などに縛られ売買しますが、個人投資家は自分のタイミングで売買できるので、機関投資家と違い「時間を味方」につけることが出来ます。これは個人投資家の唯一と言っていい武器なので有効に使いましょう。私の経験上、焦って買ってもいい結果には繋がらないので、これらの6項目をクリアしてから投資してみてはどうでしょうか。

株価が「安い」といえるのはいつ?買うべきタイミングとは

下の図は株主優待で大人気の日本マクドナルドホールディングス(2702)のチャートです。星の位置が一番安いところになりますが、この位置で買うことは難易度が高く、狙って買えるものではありません。ですから、「投資したいエリア」と「購入を避けたいエリア」を明確に決めて、現在どの位置にあるのかを確認してください。株主優待を取得出来たけど、株価が値下がりして含み損なんて、出来れば避けたいですからね。

個人投資家の武器である時間を有効に使って「投資したいエリア」まで株価が下がるのを待つことが失敗を抑えるコツです。日本マクドナルドホールディングスを例に説明しましたが、どの企業にも当てはまるので是非実践してみてください。

私の場合は「投資したいエリア」に入ってからも、最低3日間は買うのをガマンします。なぜなら、業績が大きく悪化した場合や事故、事件での急落で買うのを避けるためです。余程のことが無い限り、3日間でマーケットはおおむね織り込む(株価に反映される)ものです。

個人投資家が勝てないは「待てない」から

せっかく株主優待も貰っても、投資した株が含み損になるのは避けたいですよね。株主投資全般に言える事ですが、含み損の状態は株式投資が楽しくなくなり、投資をした事を後悔することもあります。心のコントロールを保つためにも投資する銘柄ごとに「投資したいエリア」を設定して、株価がエリア内に入ってから購入するようにしましょう。

筆者が実際に投資した銘柄をみてみましょう。下記は、ベネッセホールディングス(9783)の週足チャートです。

★マークが購入日、購入単価は1株あたり1,981円です。偶然にもほぼ最安値で購入できましたが、「投資したいエリア」内ならどこで買っても問題ないと思います。長期保有で購入したため、現在までに3度(プレゼントマーク)の株主優待と配当金を取得。これからも年に2回、株主優待と配当金をもらい続けたいと思っています。

【2022年4月11日までの成果】
購入株価 1,981円×100株
現在単価 2,204円(2022年4月22日終値)
株主優待 3回取得
配 当 金 100株あたり2,500円を3回

この状態こそ、メンタル的にも長く投資できるスタイルだと思います。株主優待と配当金、そして含み益がある銘柄を保有することによって、投資の好循環が生まれるのも間違いありません。

【参考】ベネッセホールディングスの株主優待データ

Q.ベネッセホールディングスの株主優待はいつだれがもらえるの?
A. 毎年3月末日及び9月末日現在の株主名簿に記載または記録された1単元(100株)以上保有の株主に株主優待が提供されます。
※編注:初出時に権利確定月の誤りがありました。

Q.ベネッセホールディングスの株主優待はどんな内容?
A.年に2回、カタログに掲載する優待品の中からご希望の1品を贈呈されます。下記は、2021年9月期のカタログ内容の一例です。

Q. 株主優待品カタログはいつ届くの?
A. 3月期は6月下旬、9月期は12月上旬になります。

参考:ベネッセホールディングス(9783)「株主優待制度について」

「時間を味方」に焦らず選ぶ

株主優待銘柄を取得するうえで大切なのは、身近で使いやすい株主優待を選ぶことです。権利前の飛びつき買いは避けて、権利後に株価が下がってから買うことで大きな損失を避けることが出来る傾向があります。買うタイミングは、エリアで考え「買いたいエリア」に株価が入ってきたら、下落原因の分析の為にも3日間は待ってから買うことをオススメします。また、最近では長期保有の株主には株主優待内容を優遇する会社も増えてきまいたので、株主優待銘柄を選ぶ検討材料の一つにしてみてはいかがでしょうか。

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