悪いインフレや円安の状況で、どのような資産をもつといいのか?

「悪い円安」、「悪いインフレ」という言葉が、新聞やテレビのニュースを賑わしています。このような状況下では、どの資産を保有すればよいのでしょうか。


生活が困窮化する恐れのあるインフレ

前回、今の円安は「悪い円安だ」という話をしました。

2月の企業物価指数が9.7%も上昇しているにも関わらず、なぜ消費者物価指数は0.9%の上昇に止まっているのか。それは企業がコスト削減に努め、企業間で取引されているモノの価格上昇分を、小売価格に転嫁しないようにしているからに他なりません。

しかし、小売価格が上がらないことを手放しで喜ぶことはできません。なぜなら企業は、小売価格への転嫁をできるだけ抑えるために、コストを削減しようとするからです。つまり従業員の給料が上がらなくなる、あるいは減給される、最悪のケースだと人員削減にまで、コスト削減の影響が及んでくる恐れも、十分に考えられます。

そして、さらに資源価格の上昇と円安が進んだら、コスト削減も限界を迎えるでしょう。そうなった時、いよいよ企業は小売価格に転嫁するようになり、消費者物価指数は上昇傾向をたどっていきます。収入は全く増えないのに、生活必需品、食品などの価格が上昇すれば、私たちの生活は間違いなく困窮していきます。

このような事態に直面した時、少しでも収入源を補えるような資産運用の方法はあるのでしょうか。

インフレに強い資産とは

一般的に、インフレに強い資産というと、株式、不動産、金(GOLD)、物価連動国債などが挙げられます。株式がなぜインフレに強いのかというと、物価上昇によって名目の売上と利益が増えるからです。

不動産と金は実物資産なので、モノの値段が上昇するインフレ局面においては、その価格が下がりにくくなると言われています。そして物価連動国債は、その名のとおり、債券価格が消費者物価指数の動向に連動する国債です。

恐らく、これらのうちほぼ確実にインフレに強いと思われるのは、債券価格が消費者物価指数に連動するように設計された物価連動国債でしょう。ただし物価連動国債は一応、個人向けにも発行が解禁されていますが、現時点では新規発行されておらず、もっぱら投資信託を通じて間接的に投資する形になります。

では、他の資産はどうなのかということですが、これはケース・バイ・ケースです。

株式の場合、問題になるのはその企業が提供している商品、サービスに価格転嫁ができるかどうかです。価格転嫁できる企業であれば、売上や利益の増加につながり、インフレに負けないパフォーマンスが期待できると考えられますが、ひとつ問題があります。

それは、日本をマーケットにしている企業だと、思っている以上に売上や利益が伸びない恐れがあることです。理由は前述したように、従業員の給料が上がらなかったり、人員削減が行われたりする恐れがあるからです。消費意欲が高まらなければ、いくら物価が上昇したとしても、数量が捌けませんから、売上増や利益増につながらないことも考えられます。つまり、株式であれば何でもインフレに強いとは限らないのです。

実物資産への投資も良し悪し

次に不動産ですが、これも一概に何でも値上がりするとは限りません。誰もが欲しがるような物件であれば、十分に値上がりを期待できますが、欲しがらないような物件ではどうしようもありません。

ちなみに筆者個人の話で恐縮ですが、実家を売却しようとしているものの、立地があまりにも悪いことから、ほとんど買い手が付かない状況です。

将来的に日本の人口が減少していくことからも、かつての土地神話が復活することはないでしょう。そう考えると、インフレだから不動産に投資するとしても、どこを買うかという点が問われてきます。

同じ実物資産でも、不動産に比べれば金の方が、まだインフレリスクのヘッジには効くと思われます。実際、国内金価格は2019年6月あたりから上昇し始めていますが、昨年12月あたりから騰勢を強めています。これは国内だけでなく海外も同様です。

しかし、金をいくら持っても、キャッシュフローは生まれませんし、一番の問題はこのインフレがいつまで続くのか、という点でしょう。インフレが長期化するとしたら、金をポートフォリオの一部に組み入れることの効果は期待できそうですが、どこかでインフレが落ち着いたら、恐らく金は売られます。

前述したように、金は一切、キャッシュフローを生み出しませんから、値下がりがダイレクトに資産価値を目減りさせます。正直、いつまで続くか分からないインフレのために金を買うのは、ポートフォリオの効率を下げるだけと考えています。

注目したい米国株、グローバル株投資信託

正直、こうして考えると、なかなかこのインフレリスクをヘッジするのに適当な投資対象がないのですが、注目しているのは米国株式、あるいは米国株式や世界株式を組み入れて運用する投資信託です。

今のインフレの一要因が円安にあるとしたら、米国株式や海外市場に投資する投資信託のパフォーマンスには為替差益が反映されるので、円安によるインフレリスクをヘッジする効果が期待できます。

かつ、日本人を相手に商売している日本企業は、インフレの価格転嫁が難しそうですが、米国内の市場、あるいはグローバル市場を相手にしている企業であれば、経済が成長しているだけに価格転嫁が容易です。

その意味では、日本企業でもグローバルの売上比率が高い企業の株式であれば、インフレヘッジが期待できそうです。

結論としては、グローバル市場を相手にしている日本企業の株式と米国企業の株式、あるいは米国株式や世界株式を組み入れて運用する投資信託が、今のインフレ下においても、また悪いインフレが収まって世界的な景気拡大が再び期待できる状況でも、ポートフォリオのパフォーマンスを高めるうえで有望な選択肢であると考えられます。

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