引きこもりの若者ら農業体験 平塚で動き出した就労支援「自信付けてステップアップを」

湘南ライスセンターのスタッフと一緒に作業する農業体験の参加者ら=平塚市大島

 不登校や引きこもりの若者と人材不足に悩む農家をつなげようと、神奈川県平塚市を拠点に活動するNPO法人「ぜんしん」(同市中堂)の農業体験を通じた福祉事業が5月からスタートした。市の協力を得た市民提案型協働事業で、就労や復学など自立支援に向けて実践的な場を設け、就農に結び付けるのが狙い。同法人の柳川涼司理事長(48)は、自身の引きこもり経験を踏まえ「彼らが自信を付け、自己肯定感を高めて段階的に上がっていくのが大事」と強調する。

 汗ばむ陽気となった5月上旬。稲作の全行程を請け負う農業生産法人の収穫施設「湘南ライスセンター」(同市大島)に、米作りの農業体験に参加する人たちの姿があった。ベルトコンベヤーで次々と流されてくる育苗トレーを運び出す作業に、参加者からは「機械化が進んでいて面白い」「まだ始めたばかりなので難しいかは分からない」といった感想が聞かれた。

 農業体験には不登校や引きこもり、未就労状態からの改善を目指す10~40代の12人が応募。中には横浜市や南足柄市などの遠方から足を運ぶ参加者もいるが、全員が農業未経験という。

 5月から来年3月末まで計10回程度を予定し、同センターや個人農家で米作りや野菜収穫を手伝う。縁があれば就農に至るが、農業体験はあくまでも「立ち直りのきっかけ」(同NPO)で、産業カウンセラーや引きこもり経験のあるスタッフが農業にこだわらず手厚くサポートし、職業訓練所とは一線を画すという。

 この日の農業体験に参加した11人のうち、就労を目指す参加者の男性(39)は「もうすぐ40歳なので、ここで動かなければまずい」と切実な様子。高卒認定試験に合格した上で、農業インターンシップ制度を利用して就農を志す女性(16)は「将来は人の食に関わる仕事がしたい」と語った。

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