捨てられるものに光当てたい 規格外ミカン使い商品開発 諫早高3年の岸さん

「捨てられる物を生活を豊かにする物に変える循環を生みたい」と語る岸さん=諫早市内

 捨てられる物に光を当てたい―。長崎県立諫早高3年の岸ふみさん(17)が生産者らと連携し、規格外で出荷できない県産ミカンを香り付けの材料に使ったキャンドルを開発。岸さん自身が商品ブランド「ROKU(ロク)」の最初の商品として、4月から販売を始めた。食品を廃棄するのではなく、生活を豊かにする品物に変えていく新しい循環を作り出すことが目標。同ブランドで、フードロス問題の解決に役立つ独自の商品を展開していく考えだ。
 ■何か行動を
 食べることが大好きだった岸さん。中学3年の終わりごろ、偶然に動画投稿サイト「ユーチューブ」で、トラックの荷台から大量のパンや野菜が処分場に投げ込まれる映像を見て衝撃を受けた。「効率が良くても、これでいいの?」。大量生産・消費社会のありかたに疑問を持ち、何か行動を起こしたいと感じた。
 高校入学後、農業の現状を知ろうと県内の生産者に連絡。規格外の農産物を売る機会が地元でほとんどないこと、生産者が加工・販売まで担う「6次産業」は手間やコストの面で壁が高いこと…。現場の話を聞くうち、捨てられる物に新たな価値を付け流通させる「アップサイクル」をしたいと考え、行動に移した。
 独自のライフスタイルを発信する同世代のユーチューバーで、以前からファンだった「Long dis」さんに連絡し共同活動を提案。一緒に商品開発を進めることに。大地の恵みを育む山の「麓」などの意味を込め、ブランド名を「ROKU」と名付けた。
 ■少しふぞろい
 着目したのは県内で生産が盛んなミカン。化粧品ブランドを運営する県内のミカン生産者の協力を取り付け、精油で香り付けしたキャンドルの生産を目指して昨年秋ごろ準備を開始。実態を知ってほしくて呼んだ友人らも加わり、昨年末と3月、ミカンの皮から精油を蒸留する作業に初めて取り組んだ。
 県内の農家から届いたミカンは大きさが少しふぞろいなだけに見えた。「これで売れないの」。ひたすら皮をむきながら驚いた。2回の作業で、計350㌔のミカンから計330㍉㍑を蒸留した。

3月にミカンの皮むき作業を行った参加者ら=諫早市内(岸さん提供)

 出来上がった精油を使い、OEM(相手先ブランドによる生産)を請け負う県外企業でキャンドルを生産。廃棄予定の花を再利用したドライフラワーで装飾したり、環境に優しい植物性の素材を使ったりなど、こだわりを詰め込んだ計60個が完成した。
 ■同世代が購入
 価格は1個4840円。先月6日にオンラインショップで販売開始し、その日のうちに予定の個数を完売した。購入者の多くは県外の高校生や大学生。「品物に自信はあったが売れるか不安だった。若い世代に届いたことがうれしい」
 今後はキャンドルの価格や、材料のミカンの集め方などが課題。ミカンの実の活用も進める予定だ。「捨てられるものの生かし方を考えることが楽しい。商品を通じて丁寧で心豊かな暮らしの価値観も広げたい」と、にこやかに語った。


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