遠距離の証言調査へ 「被爆体験者」団体 島原半島など、原爆の実相掘り起こし

遠距離の証言調査に取り組むことを決めた「長崎被爆地域拡大協議会」の総会=長崎市興善町、市立図書館新興善メモリアルホール

 国の指定地域外で長崎原爆に遭い被爆者と認められていない「被爆体験者」でつくる長崎被爆地域拡大協議会(峰松巳会長)は本年度、原爆の実相を掘り起こすため、島原半島など遠距離での証言調査に新たに取り組む。
 11日に長崎市内で開いた総会で決めた。長崎の被爆地域は南北に長いいびつな形で、同協議会は爆心地から半径12キロ圏内を等しく被爆地域とするよう求めてきた。ただ、原爆投下後、数十キロ離れた同半島でも一定の放射線量を米マンハッタン管区原爆調査団が測定。「原子雲が押し寄せた」などの証言もある。より広く原爆の実相を掘り起こすことにした。
 「黒い雨」などの放射性降下物に関する証言を集める「証言調査部」などの新設も決定。本格的な調査は今後進める予定で、山本誠一事務局長(86)は「世界に対し、原爆がどれだけ悲惨か明らかにするためにも取り組みたい」と語った。
 同協議会とは別に、県と長崎市に被爆者認定を求め長崎地裁で係争中の被爆体験者らも11日、県市に早期救済を要望。黒い雨被害を巡り、救済が進む広島との間に格差が生じているのは「不合理」だとして、国に解決を強く働きかけるよう求めた。原告の岩永千代子さん(86)は「私たちは(放射性降下物による)内部被ばく者で、今も苦しんでいる」と窮状を訴えた。


© 株式会社長崎新聞社