核の力でなく「対話」を 平和宣言起草委初会合 非核三原則堅持も 長崎

ウクライナ情勢などを踏まえ、平和宣言について意見を出し合った委員ら=長崎市平野町、長崎原爆資料館

 長崎市の平和祈念式典(8月9日)で田上富久市長が読み上げる「平和宣言文」の起草委員会の初会合が7日市内で開かれた。今年は、ウクライナ情勢の緊迫化で今までになく核の脅威が高まる中での開催。多くの委員がロシアの侵攻や核兵器による威嚇に抗議し「対話」による解決を求めた。日本政府に対しても「非核三原則」の堅持を訴える声が相次いだ。
 6月にオーストリアで核兵器禁止条約の第1回締約国会議、8月には米国で核拡散防止条約(NPT)再検討会議が予定され、被爆地が発する平和宣言も注目される。委員長の田上市長は「長崎が伝えてきた核兵器の怖さが世界に十分伝わっていない。『使われないだろう』は幻想。実際に核兵器が使われ得る危機感を世界と共有すべきで、しっかり訴えたい」と述べた。
 委員らは武力や断絶でなく、対話の重要性を強調。ナガサキ・ユース代表団の中村楓さん(21)=長崎大4年=は「ロシアを国際社会から排除して終わるのではなく、核を使わずに平和をどう構築するのか、世界全体で考える契機にしないと」と訴えた。
 米国の核兵器を日本に配備し共同運用する「核共有論」について長崎原爆被災者協議会の田中重光会長(81)は「被爆者からすればもっての外。恐ろしい」と懸念。長崎平和推進協会の調漸理事長(66)は「かつてなく戦争の危機が間近に感じられるからこそ被爆者の訴えが必要。非核三原則を再確認し、核を振りかざして力を誇示するのではなく、対話する姿勢が必要」と指摘した。
 3月末に被爆者5団体の一つが解散するなど、被爆者運動の継続が難しくなりつつある。被爆者活動への支援や被爆体験者の早期救済、憲法9条の堅持などを求める意見もあった。
 委員は被爆者や有識者ら16人。市は意見を踏まえて平和宣言文の素案を次回会合で示し、7月末にも取りまとめる。


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