「犯人にとっては宝の山」 神社の銅板盗難に注意 栃木県内、既に昨年の4倍

銅板がはがされ、下地がむき出しになった羽黒神社拝殿の屋根=5月上旬、茂木町町田

 栃木県内の神社の屋根や壁から銅板が盗まれる被害が今年に入って急増している。県警によると、5月上旬までに芳賀地区や下都賀地区などで少なくとも17件発生し、4件だった昨年1年間の4倍に上る。銅の世界的な需給逼迫(ひっぱく)と価格高騰が背景にあり、転売目的とみられる。人家や通りから離れた人目に付きにくい神社が狙われやすい。県警は窃盗事件として捜査する一方、「センサーライトの設置や見回りの強化などに努めてほしい」と注意を呼び掛けている。

 「やられた」。5月2日午前、茂木町町田の「羽黒神社」。見回りをしていた地区の氏子総代を務める農業稲葉良一(いなばりょういち)さん(67)は、異変に気が付いた。屋根の下地がむき出しになり、あるはずの銅板がない。すぐに茂木署へ通報した。

 県内の神社で銅板窃盗の被害が多発しているとの情報を受け、4月から役員による見回りを強化したばかりだった。神社は民家から数百メートル離れた城跡にあり、人気はなく地域の目が届きにくかった。

 稲葉さんは「悔しいし、頭にきている。犯人にとっては宝の山にみえるのだろう」と頭を抱える。町内の別の神社の宮司は「神職が常駐していない神社は警報が鳴っても気付けない」と防犯対策の難しさを語る。

 県神社庁によると、県内には約1900の神社があり、宮司が常駐する本務神社は一部にとどまる。同庁の担当者は「今までにないペースで被害が出ている。人目につきにくいお社ばかり狙われている」と嘆く。

 背景には銅の価格高騰がある。非鉄金属業大手「JX金属」公表の基準価格は2020年4月に1キロ584円だったが、今年4月は約2.3倍の1336.5円に達した。銅を多く使う電気自動車(EV)の普及などで需要が高まっているという。

 県警によると、銅板のほか銅線や側溝、マンホールの鉄製のふたなど金属の盗難被害は県内で急増している。20年は376件、21年は1.8倍の691件だった。今年は4月末までで214件に上り、昨年を上回るペースという。

 県警の担当者は「不審な人や車を見たらすぐに通報してほしい。被害防止には地域の複数の目で警戒することが重要だ」と訴えている。

銅板がはがされ、下地がむき出しになった羽黒神社拝殿の屋根=5月上旬、茂木町町田
屋根の銅板が盗まれた羽黒神社=5月上旬、茂木町町田

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