ライブの準備はOK?槇原敬之のツアーきっかけで「HAPPY DANCE」を再発見! 槇原敬之の全国ツアーがスタート! 本当に沁みるマッキーの歌「宜候」と「HAPPY DANCE」

槇原敬之のツアーがスタート! 再発見した失恋ソング「HAPPY DANCE」

槇原敬之の全国ホールツアー『槇原敬之 Concert Tour 2022 ~宜候~』が5月14日から幕を開けた。

実は私も今回どうしても彼の歌が聴きたくて、チケットを購入した。そしてツアーに向けて過去の楽曲を検索しているうちに、「あんなに大好きだったのに、なぜ今の今までこの曲を忘れていたのか!!」という曲がヒットした。それが20thシングル「HAPPY DANCE」。リリース当時は鬼リピしたものだが、現在これまた鬼鬼リピ状態である。何度聴いても震える!

この歌、タイトルは限りなく幸せそうなのに、かなりコテンパンの失恋ソングである。頭から終わりまで描かれているのは「フラれている真っ最中、様々な思いが駆け巡る様子」。歌詞には一回も「HAPPY DANCE」というワードは出てこない。

私はこの曲、初めて聴き流したときは両想い記念日ソングとカン違いしてしまったが、これはもう致し方ないだろう。

アコーディオンやフラメンコギターがシャカシャカと情熱的な音色を奏でる情熱的なアレンジ。そこに凛々しく入るパリージョ(フラメンコに使うカスタネット)は心を跳ね上げる。しかも1番、2番、3番すべて「一番最初の日」という何かが始まる希望的なワードで締められる。

タイトルも直訳したら「幸せな踊り」だし、告白してYESの返事をもらった浮かれ具合を歌った曲なのね、と思うじゃないかい! 

ところがよくよく聴くと、別れを切り出され、ものすごい必死に気持ちの整理をしようとしている主人公が浮かんでくるのである。

 花吹雪のように思い出をばらまいて
 蹴散らしながら踊ろう
 一つも残さないように

 フォークダンスの曲が君の番で終わっただけ

まさにマッキーの真骨頂。こういった美しくも破壊力MAXの失恋描写が、フラメンコ調の音楽と、彼の澄んだ高音に乗り心に降り注ぐのだ。

別れの瞬間の絶望と同時に訪れる不思議な「恍惚」

悪い予感がずっとしていて、実際別れを切り出された時って、きっとこんな感じ。

覚悟していたとはいえ、それなりに覚えるショックと恥ずかしさ、これまでの思い出と反省、最後ぐらいいいところを見せたいというプライド……。

あらゆる感情がガーーッと洗濯機の如く凄い回転で混ざり合う。そして散り散りになり花吹雪の如く一気に舞う!

別れはもちろん悲しいけれど、どこか陶酔や恍惚みたいなものも感じるもの。この歌にはそれも見事に歌われている。嗚呼、カタルシス!

アルバムバージョンは哀愁度強め「この曲で踊りたい?」「絶対無理」

しかし9thアルバム『Cicada』に収録されているアルバムバージョンは、シングルバージョンより、哀愁と切迫感が強め。「嗚呼、カタルシス!」なんてノンキな感情は出てこない。別れのリアルな気まずさが伝わってくるアレンジは、少し怖いほどだ。

いきなり出だし、イントロに重なってこんな英語のセリフが入っている。

男性の声:「Do you wanna dance with this song?(この曲で踊りたい?)」
女性の声:「Absolutely not(絶対無理…)」

このやりとりが、何度も何度も!

また、大サビの「さようならのキスを」のあと、唐突に「最初の日」という歌詞が割り込んで入る。こちらもシングルバージョンにはなく、自分に必死で言い聞かせようとしている感じが切ない。

1992年にリリースされた5thシングル「もう恋なんてしない」にも共通する、必死で潔くしようとして、結果センチメンタルの極みになっているイメージ。

潔癖なほどの一途さ、純度の高さがヒリヒリしてクセになるのだ。

本当に沁みたマッキーの復帰曲「宜候」

私は少し彼の歌から離れていた時期があったが、偶然、2021年10月に配信された復帰曲「宜候」を聴いて、これが本当に本当に沁みた。すぐ彼のプレイリストを作り、ツアーチケット争奪戦に参戦するに至ったほどである。

「宜候」には「さようならだ もうさようならだ」と、古いつながりをリセットして新たな旅に出るくだりがあり、とても印象的だ。

一つ終わることで、次の希望がある、というのは「HAPPY DANCE」との共通点。ああ、別れは “最後” ではなく “はじまり” なのだ。

「HAPPY DANCE」の歌詞カードを見ると、繰り返し出てくる「一番最初の日」の表記がぽこんと飛び出ていて、なんとも美しい。

カタリベ: 田中稲

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