荒れ地を“再生”15年超 老人会「百合乃会」花壇管理終える 「寂しくなる」と惜しむ声

江口さん(右)ら「百合乃会」が長年世話した花壇。3月末で管理を終え、雑草も増えてきた=時津町元村郷

 長崎県西彼長与町高田郷の百合野地区の老人会「百合乃会」が、付近の荒れ地を“再生”し、15年以上世話をしてきた花壇や畑の管理を3月いっぱいで終えた。土地の所有者が代わったり、会員の高齢化が進んだりしたため。今後の活用については決まっていない。「花いっぱいの状況が当たり前になっていたので寂しくなる」と惜しむ声が上がっている。
 花壇や畑は、時津町元村郷の百合野地区との境界近くの約660平方メートル。同会は2006年、ごみが散乱するなど荒れ果てていた敷地内で、草に覆われた不動産業者の看板を発見。所有者と連絡を取り「必要になったら返す」条件で、無償で使わせてもらうことになった。
 同会は、草刈りや整地をして畑や花壇へとよみがえらせると、月に2回ほど草刈りや水やりなどをしてきた。春はビオラやキンセンカ、夏はマリーゴールドなど季節の花々が行き交う人の目を楽しませ、サツマイモの苗植えや収穫で地元児童らとの交流の場にもなった。お手製のベンチも置き、お年寄りの憩いの場にも。近くの女性は「いつもきれいな花で楽しませてもらっていた」と話す。
 ところが、数年前に土地の所有者の一人が亡くなった。相続した家族は、事務手数料などを除き無償譲渡したい意向を示した。しかし、市街化調整区域で利用も限られることから、引き取り手は見つかっていない。同会でも譲り受けを検討したが、税金の支払いや花壇の世話が高齢者には体力的に負担となり、断念した。土地所有者の家族は「雑草を取ったり管理するのが大変だった中、長く地域のために活用してもらい感謝している」と話した。
 3月末まで百合乃会の会長を務めた江口洋さん(77)は「無償で長年使わせていただきありがたかった。地域の子どもたちとの交流の場にもなり、楽しい思い出が残った。少し残念な気持ちもあるが、老人会で土地をもらい受けるわけにもいかず、総会で管理をやめようと決めた」と語った。


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