選べる制服に統一検討 大村市教委の学校改革 規模適正化、学習評価見直しも

住民基本台帳に基づく児童・生徒数の推計(大村市教委調べ)

 長崎県の大村市教育委員会は本年度から、小中学生の教育環境の充実を目的とした「ミライへつなぐ学校教育検討事業」(事業費320万円)に新たに取り組んでいる。市立中学でジェンダーフリーの統一型制服を導入することや、小中学校の規模適正化と学習評価の見直しの3点を重点項目に掲げ、実態を調査し、有識者や地域住民らも交えて対応策を検討していく。

■価格差1万円

 市教委によると、市内6中学の制服は学校ごとにデザインが異なり、販売店によりメーカーや生地の材質も違う。統一型制服はジェンダーフリーの推進を考慮し、性別に関係なくスラックスやスカートなどを選択できるようにする方針という。
 また冬服の学校別の平均価格は男女とも最大1万円近く差があり、家庭の負担額に不公平が生じている。統一型制服を導入することで、どの中学でも決まった価格で購入できるようになり、市内で転校する際も制服を使い続けることができるメリットがある。
 市教委は早ければ2024年度導入を検討しており、賛否や要望などに関するアンケートを本年度の早い段階で実施する。対象には中学生のほか、小学生や保護者らも含める予定。
 西村一孔教育政策監は「『各校の特色がなくなる』という地域の声もあるだろうし、制服を取り扱う事業者にも影響する。アンケート結果を踏まえ総合的に判断したい」と話している。

■平準化せずに

 人口増が続く大村市では、地域によって市立小中学校の児童生徒数に偏りが出ており、学校規模の適正化も課題となっている。市教委は実態調査を踏まえ、25年度にも基本方針を取りまとめる考えだ。
 市立小中学校の児童生徒数(5月1日現在)は小学校6342人、中学校2994人。住民基本台帳を基にした推計では、27年度まで全体的に横ばい傾向が続くとみられる。
 一方で各校の児童生徒数(同)は、最多となる竹松小の1058人に対し、最少の黒木小は21人と千人以上の差がある。中学校では桜が原中が最多の779人、郡中が648人と続き、萱瀬中が48人と最も少ない。
 市教委は23年度から福重小を皮切りに始まる市立学校舎の建て替え・修繕工事に合わせ、教室やトイレの数といった設備のほか、地域交流や防災面での機能も見直す方針。ただ「大規模校と小規模校にはそれぞれ良い点がある」として、必ずしも児童生徒数の平準化は目指さない考えで、校区の見直しや通学先の自由化なども視野に検討を進めるとしている。

■多様性と個性

 同検討事業ではこのほか、これまで各学校で独自の基準があった学習評価も見直す。子どもの自己肯定感を高めることを目的に、市内で共通した見方や考え方の指針を示す。
 遠藤雅己教育長は「重点項目の3点はどれも連動しており、どれ一つ外せない視点。ダイバーシティ(多様性)&インクルージョン(包括)の考えの下、子どもたちの多様性や個性を認め、自信と達成感を持って次のステップに進めるような義務教育を目指したい」と展望を示す。


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