【追う!マイ・カナガワ】続・複雑過ぎる道路標識(上)横浜にまた…運転者ため息 分かりにくさ倍増

「除く」という表現が分かりづらい標識=横浜市中区

 分かりにくい道路標識を何とかできませんか? 神奈川新聞の「追う! マイ・カナガワ」取材班が昨年11月、読者の疑問を出発点に横浜市中区のJR石川町駅そばの標識を取り上げ、記者が新たな標識を提案したところ、多くの反響が寄せられた。通学路が商店街にあることから、各所の要望を受けて複雑になった標識については後日、複数のテレビの情報番組でも報じられるなど世間の関心は高いようだ。今回はみなさんの意見も踏まえ、標識の分かりにくさの原因について、さらに掘り下げたい。

◆何度も“引き算”

 問題の同区石川町2丁目の標識には、大和市の会社員男性(50)からこんなラインメッセージが届いた。

 「『除く』という表現が頭の中で“引き算”をしなくてはいけないので分かりづらいのでは」

 記者は思わずメッセージを二度見し、腑に落ちた。確かに、この標識はいきなり「何を除くのか」と、曜日の計算をしながら、今はどの時間帯なのかを読み解かねばならない。

 さらに同市旭区の作業療法士女性(43)が送ってくれた別の分かりにくい標識の写真を見て、その思いが一段と強固なものになった。

 「大型等終日、大型等以外の車両/二輪・小特・軽車両を除く/土曜・日曜・休日を除く」

 『以外』が1回、『除く』が2回も出現して、分かりにくさが倍増している。

 ある日の午後3時半ごろ、記者は旭区鶴ケ峰1丁目の現場に行ってみた。すると、標識が理解されていない様子を確認することができた。直進のみ可能な時間帯だが、2台続けて左折して行く。

 走って追いかけ話を聞いた。標識の写真を見せると、近所に住んでいるという女性(77)は「ん、これはどういうことなの? まさか曲がれないとは思っていなくて…」と驚いていた。

 今度は曲がった先で待っていると、脇道から車が入ってきた。運転する男性(50)に話を聞くと、「あの標識はややこしい」とため息をつく。昨秋、警察に取り締まられ、このルートを教わったという。

◆「平日」が不明瞭!?

 曜日に関しては「平日」で良いのではないだろうか。どうして「除かれた答え」を書かない意地悪をするのだろう? ほかの投稿者ともやり取りする中で、この思いに「同感」という反応を数多くもらった。

 こうした標識の文言は、警察署の担当官が「交通規制基準」という通達に従って作成しているという。基準を管轄する警察庁に疑問をぶつけてみることにした。

 『平日』という表記を避けていることについて、警察庁はこう回答してきた。

 「平日や週末、学校の休校日、冬季など不明瞭な表現は避けております」

 平日が不明瞭? 広辞苑で調べてみると、平日は「日曜・祝祭日以外の日」と出ている。いきなり「土曜日はどっちなんだ」問題は出てきたが、そもそも世の中には平日があふれているではないか。飲食店のハッピーアワー、電車やバスのダイヤ。一体何が不明瞭なのか。頭が固いのではないか。

 記者は、前回のマイカナの記事に共感してくれた警察関係者のK氏から「素朴な疑問をきっかけに、交通ルールが変わった事例もありますよ」と激励が寄せられたことを思い出しながら、「表記が分かりにくいと感じる住民の声」についての見解をただした。

 すると警察庁は、分かりやすいものとなるように住民の声を聞き、柔軟に対応していると強調してきた。

 例えば、外国人に分かりやすいように「止まれ」に英字の「STOP」を併記、子どもに分かりやすいように「横断禁止」を「わたるな」と平仮名表記を可能にした実績があるという。

 だとしたら声を上げれば、分かりにくい標識が本当に改善されるかもしれない。そこで、前回の記事で記者が提案した新しい標識を見てもらうと、「頂いた御意見は、今後の業務の参考とさせていただきます」と反応があった!

 そんなに「参考にしたい」というならば、『平日』という表記を実現してもらって、難解な「除く」を退治しようではないか。

 ◆マイカナと「分かりにくい交通標識」 横浜市中区のJR石川町駅周辺には分かりにくい交通標識が多いという読者からのリクエストを取材した。住民から「通学の時間帯」、商店主から「買い物客が多い日曜日の午後」に、それぞれ「車を通さないでほしい」というダブルの要望を受けた警察が規制を設け、複雑な標識になっていることが判明。昨年11月24日付の記事で、記者が新標識も提案した。

© 株式会社神奈川新聞社