勝田貴元、表彰台まであと一歩に迫る4位入賞「もっとペースを改善したい」/WRC第4戦ポルトガル

 5月19日から22日にかけて、ポルトガル北部の都市ポルトを中心に、2022年シーズンのWRC世界ラリー選手権第4戦『ラリー・ポルトガル』が行われ、TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムに参加してWRCトップカテゴリーに出場している勝田貴元/アーロン・ジョンストン組(トヨタGRヤリス・ラリー1)は、今季のベストリザルトに並ぶ総合4位でラリーを終えた。

 ラリー・ポルトガルは今シーズン最初のグラベル(未舗装路)イベントだ。勝田は過去の大会に何度か出場し昨年は4位入賞を果たしたが、プラグイン・ハイブリッドシステムが搭載された、新世代のラリー1カーでのグラベルラリーは今戦が初めてとなり、新しいチャレンジとなった。

 19日(土)に幕を開けたイベントの初日は古都コインブラの市街地でSS1が行われ、勝田はここで7番手タイムをマークした。翌日からは本格的なグラベルでの戦いに。今大会の路面は例年以上に荒れ、とくにステージの再走時には、ラリーカーの走行によって掘り出された岩や尖った石、そして深い轍によって多くの選手がクルマとタイヤにダメージを負うことになった。

 そんななか、勝田はSS6でハーフスピンを喫したものの、それ以外のステージは安定したペースを刻みデイ2終了時点で総合4番手につける。さらに、デイ3に入ると総合3番手を走るダニ・ソルド(ヒョンデi20 Nラリー1)に迫りSS12で逆転。その後もステージ3番手タイムを4回記録するなどペースを上げて一時はリードを14.6秒にまで拡げるも、デイ3最後のステージで路面コンディションの違いからタイム差を縮められ、5.7秒差で最終日を迎えることになる。

 22日(日)のデイ4は豊富な経験を持つベテランのソルドが徐々に差を縮め、最終パワーステージとなったSS21“ファフェ2”を前に両名のギャップは2.2秒に。この日の朝から4ステージにわたって総合3番手を守り続けていた勝田は渾身の走りで対抗するが、ステージ2番手タイムを記録した“仕事人”ソルドのタイムに4.3秒及ばず。結果、最終ステージで逆転を許し、3位とわずか2.1秒差の総合4位でのフィニッシュとなった。

 しかしながら、今季2度目の4位入賞によりドライバーランキングでは6番手から3番手に浮上。また、所属チームであるTOYOTA GAZOO Racing WRTネクストジェネレーションにもマニュファクチャラーポイントをもたらしている。

勝田貴元/アーロン・ジョンストン組(トヨタGRヤリス・ラリー1) 2022年WRC第4戦ポルトガル

■チームに対しては、本当に申し訳ない気持ち

「今回、(勝田)貴元は本当にいいラリーを戦ったと思う」と語るのは、プログラムのインストラクターを務めるユホ・ハンニネン。

「確かに最終結果は残念だったと思うが、この週末に彼が成し遂げたことは、将来に向けて非常にポジティブなことだ。ソルドのようなドライバーを相手にポルトガルで2日間も3位争いをしたのは、本当に貴重な経験になったことだろう」

「土曜日の夕方に行われたスーパーSSは、貴元にとってアンラッキーだった。路面が急速に乾いていったことでコンディションが変化し、日中に築いたギャップをほとんど失ってしまったためだ。それでも、グラベルのステージではクルマにかなり満足していたようなので、今後のラリーにも期待が持てるし、今回ミスをすることなく走ることができていたのも重要なことだ」

「このような戦いにおいては、攻めながらも安定性が求められるが、それができていた。前戦クロアチアでの困難な時を経て、ポジティブな姿勢でサルディニアに向かうことができるだろう」

 惜しくも2021年第6戦ケニア以来、自身2度目となる表彰台の獲得を逃す結果となった勝田は、土曜日以降はクルマのフィーリングがよく、ソルドとの3位争いも楽しめたという。

「ポルトガルはつねにタフなラリーですが、金曜日の路面コンディションは予想していた以上に厳しく、走りきることができただけでも良かったと思えるほどでした」と今戦を振り返った勝田。

「しかし、土曜日のステージはとても走りやすくて自信もあり、クルマも非常にいいフィーリングでした。ダニとのバトルはとても楽しかったですし、日曜日の朝も彼の前を走ることができていました」

「ところが、最後のステージではダニがかなりプッシュし、残念ながら彼のタイムに対抗することができず順位を失ってしまいました。彼には『おめでとう』と言いたいですが、チームに対しては本当に申し訳なく思います」

「前戦のクロアチアは、今回のような結果やパフォーマンスにはほど遠いラリーだったので、それに比べれば今週はかなり良かったとも言えますが、何とも言えない複雑な心境です」

「カッレ(・ロバンペラ/総合優勝)やエルフィン(・エバンス/総合2位)との比較では、もっとペースを改善したいので、さらに速く走れるように努力を続けます。すぐに次のラリーが始まるので、前向きな気持ちで、自信を持って次戦サルディニアに臨みたいと思います」

 WRCの次戦第5戦ラリー・イタリア・サルディニアは、今季2戦目のグラベルラリーとして6月2日から5日にかけて開催される。

勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1)と3位表彰台を獲得したダニ・ソルド(ヒョンデi20 Nラリー1)とのタイム差は、わずか2.1秒だった
最終ステージまで3位表彰台を争ったダニ・ソルド(ヒョンデi20 Nラリー1)と勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1) 2022年WRC第4戦ポルトガル

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