新型ニッサンZをドライブする星野一樹が語る富士SUPER TEC 24時間レース「夜が明けるまでは着実に走る」

 今年の6月に富士スピードウェイで開催される『NAPAC 富士SUPER TEC 24時間レース』には見逃すことのできない貴重な1台が参戦することが話題になっている。ST-XからST-5までの全9クラスで争われるスーパー耐久シリーズで、ニッサン/ニスモがST-Qクラスに投入する新型『ニッサンZ』をベースとしたレースカーがそれだ。新型『ニッサンZ』のシェイクダウンの手応え、そして本番の24時間レースに向けてどのような手応えなのか、ドライバーたちに聞いた。

 2022年で5回目の開催を迎える『NAPAC 富士SUPER TEC 24時間レース』。日本唯一の24時間レースとして、今季もENEOSスーパー耐久シリーズ2022 Powered by Hankookの第2戦として、6月3~5日に富士スピードウェイで行われる。事前公式テストが行われた5月10日の富士には49台が終結。

 ST-Qクラスに投入する新型『ニッサンZ』はNISMOから平手晃平/松田次生/ロニー・クインタレッリ/星野一樹/佐々木大樹組の230号車、Max Racingから田中哲也/田中徹/三宅淳詞/高星明誠/安田裕信組の244号車という2台が長丁場の戦いに挑む予定になっている。

 新型Zのステアリングを握るドライバーのなかから、富士24時間で総合優勝経験を持つベテランの星野一樹と、今季は国内トップフォーミュラである全日本スーパーフォーミュラ選手権にも参戦する若手ドライバーの三宅淳詞に今回、話を聞いた。

 富士24時間ではニッサンGT-RニスモGT3を駆り、2018年、2019年と二度の総合優勝を誇る星野は、まずは24時間という長丁場レースを戦い抜くことをポイントに挙げた。

「いつも僕が乗っているときにみんなで話し合うことは、夜が明けるまではかなりステディ(着実)に走るということです。それが24時間レースを走りきるにあたってのコツになります」

2018年、2019年と富士24時間を二度制している星野一樹

 2020年の富士24時間ではDAISHIN GT3 GT-Rから参戦していた星野。決勝レースでは、トップを走行していながらもピットロードの速度違反により60秒ストップペナルティが科され首位から陥落してしまう。追い上げる立場になったDAISHIN GT-Rは、夜間走行中に他クラスの車両と接触しダメージを負い、ガレージでの修復を余儀なくされ総合3位に終わった経験がある。

 星野は「意外と現代のクルマはレーシングスピードで長時間走行しても壊れないので、夜が明けるとドライバーはゾーンに入ってしまいます」と続けた。

「ただ、夜明けを超えないとどうにもなりません。とにかく朝を迎えるまでは、速いクルマが迫ってきたら譲るくらいの気持ちを持ちながらしっかりと走り切り、朝を迎えたら勝負するという風にやっていきたいです」

 また、富士24時間には2020年、2021年とMax RacingのZ34で参戦経験がある三宅も、長丁場のレースでは「タイムよりも、いかに生き残るか」が重要だと語る。

「もちろん速く走ることも大事ですが、昨年のレースでも、タイムが速くてもクルマにトラブルが出てしまい、結果的にリザルトが後ろになってしまったということがありました。ですので、とにかくぶつからない、縁石に乗ってクルマを壊さないということが必要です」

スーパー耐久富士公式テスト Max Racingの244号車ニッサンZ

 22歳の三宅は、2019年のFIA-F4選手権でシリーズランキング2位となると、翌2020年はMax RacingからスーパーGT GT300クラスに参戦。2021年はGT300クラスに継続参戦しつつ、全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権で2勝を挙げる活躍をみせた。今年はGT300クラスの継続参戦と、国内トップフォーミュラであるスーパーフォーミュラへのステップアップを果たした期待の若手ドライバーだ。

 そんな三宅がMax RacingのZ34でスーパー耐久に参戦していたのはST-3クラス。しかし、新型Zのステアリングを握ることになった2022年は、スーパー耐久機構(S.T.O)が認める開発車両が参戦するST-Qクラスでのエントリーとなり、レースの結果を求めるのではなく、新型Zのマシン開発が主な目的となる。

 三宅は、マシン開発経験の豊富な先輩ドライバーとの参戦となる富士24時間に向け、「マシン開発が目的となるST-Qクラスということで、僕がお手伝いできる限り、少しでも良いフィードバックをできるように精一杯頑張っていければと思います」と謙虚な意気込みをみせた。

 そして星野は、テストでの新型Zの印象を「フィーリングは乗っていて悪くありません。今はマイナートラブルが少し出ていますが、クルマ単体としてのポテンシャルはすごく見出しているので、この先が楽しみです」と評価し、富士24時間での新型Zのマシン開発も楽しみにしている様子だ。

「クルマというのは、やはりトータルバランスを求めて開発したい。ですので、どこが良いとかではなく、どこから見ても全体的に良いクルマだと言えるように、この新型Zを開発していければいいなと思っています」

 新型Zの走りのほか、2021年にスーパーGTのドライバーを引退した星野のドライバー姿をふたたび観ることができることも楽しみな富士24時間。マシンだけでなく、ドライバーにも注目したい2022年の『NAPAC 富士SUPER TEC 24時間レース』は6月3日に公式予選が行われ、翌4日の15時から、いよいよ24時間レースがスタートする予定だ。

2022年は国内トップフォーミュラのスーパーフォーミュラにも参戦する三宅淳詞
スーパー耐久富士公式テスト Max Racingの244号車ニッサンZ
『NAPAC 富士SUPER TEC 24時間レース』の夜間走行

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