訪日客、再び

 顔のお面が瞬く間に変わる「変面」のショーの写真がスマートフォンにある。撮影は2020年2月初めの土曜日。長崎市の長崎ランタンフェスティバルの会場で、石畳に1時間ほど座り、ショーの開始を待った覚えがある▲フェスには例年、中国からの観光客が押し寄せていたが、その時はそれらしい人影はなかった。新型コロナの感染が広がり、中国政府が海外への団体旅行を停止した頃で、クルーズ船の長崎寄港は突然、キャンセルされた▲18年、クルーズ船で来県した人は過去最多の125万人。そのうち8割が中国発着だったという。大半が長崎港、佐世保港に入った。19年は減少し、これから盛り返そうという矢先、中国発の寄港がぴたりとやんだ▲4年前の黄金期へと、すぐに戻れないのは分かった上で、やっと見えてきた薄明かりに目を凝らす。6月、外国人観光客の受け入れがほぼ2年ぶりに再開されることになった▲当面の受け入れは少数で、ツアー客に限られる。閉めきったドアをそろりと、わずかに開けるような、今はそういう時期だろう▲中国はいま、海外に渡るのを厳しく制限している。クルーズ船がまた寄港するのはしばらく先だが、その日はいずれ巡ってくる。訪日観光の再開を“自分事(ごと)”として、ドアを開ける心づもりを忘れまい。(徹)

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