まちの洋食店「ニュー小浜」 半世紀の歴史に幕 5月31日閉店 名物トルコライス 「おいしい」の声に育てられ

看板メニューのトルコライスをお客に運ぶ金子珠美さん(右)=雲仙市小浜町、ニュー小浜

 長崎県雲仙市小浜町の小浜温泉街で、地域住民に親しまれた老舗レストラン「ニュー小浜」が31日、店じまいする。金子康幸さん(75)、珠美さん(73)夫妻が約半世紀続けてきたまちの洋食店は、別れを惜しむ常連客らでにぎわっている。
 「最後にトルコライスを食べに来たよ」。そう声をかけてきた客を珠美さんは、笑顔で迎える。康幸さんは厨房(ちゅうぼう)にこもり、調理に専念。閉店を知らせる張り紙もなく、店の雰囲気はいつもとさほど変わらない。
 店は島鉄バス小浜ターミナル内。親戚が経営していた店を、1973年に康幸さんが脱サラして引き継いだ。当時、温泉街に洋食店は珍しく、高級感もあり、誕生日のお祝いや給料日の外食で訪れる家族連れも多かったという。
 店は、身近な洋食店として地域に根付いた。親に連れられてきた子が、自分の息子や娘を連れてくることも増えた。「わが子の成長を見ているようで、幸せな気持ちになる」と珠美さんは顔をほころばせる。

今月末で閉店するレストラン「ニュー小浜」

 看板メニューは、来店客の8割が注文するというトルコライス。康幸さんが厨房から少し顔を出し「若い男性なら大盛り、女性なら少なめ」にと、お客に応じて量を加減し、気持ちよく食べてもらえるよう気配りしてきた。唐揚げちゃんぽんや「あずきセーキ」のファンも多い。
 休みは年に数日だけ。夫妻ともに元気だが「体が動くうちに羽を伸ばしたい」と閉店を決めた。珠美さんは「素人で始めて苦労もあったが『おいしい』『また来るよ』の声に育ててもらった。本当に感謝しかありません」と頭を下げる。


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