「核兵器禁止条約の会・長崎」結成 核軍縮の再起動を ロシアの侵攻など巡り対談

ウクライナ情勢や核軍縮を巡り対談した吉田氏(右)と朝長氏=長崎市岡町、長崎原爆被災者協議会

 長崎の被爆者団体や市民団体が28日、新組織「核兵器禁止条約の会・長崎」を結成した。長崎市内で開かれた集会で被爆者の朝長万左男氏(78)と長崎大核兵器廃絶研究センター長の吉田文彦氏(66)が対談。ロシアのウクライナ侵攻により核情勢が不安定化する中で「核軍縮の再起動」を提言、被爆地が核の非人道性に警鐘を鳴らし続ける必要性を再確認した。
 同条約は昨年発効。来月にはオーストリアで初の締約国会議が開催される。ロシアが核兵器使用をちらつかせて世界を威嚇するなど核廃絶への逆風は強い。危機感を抱いた被爆者らは、条約の意義を広め各国の参加を促そうと結集し新組織を立ち上げた。
 対談で吉田氏は、核の力を背景に侵攻するロシアは「既存の秩序を壊し、ルールが通用しない状態」で、国連も機能していないと指摘。一方、北大西洋条約機構(NATO)の核抑止力に頼るドイツやノルウェーが、締約国会議へのオブザーバー参加を固めるなど「条約を無視するのでなく、存在を認め何ができるか一緒に考える動き」も出ていると強調し、「被爆地は核兵器をなくすための針路を一貫して示してきた。今のような混乱期にこそ被爆者の声を聞くべき」と述べた。
 朝長氏は、被爆者は米国などの一部の市民団体と交流をしているが「まだ『点』でしかなく『面』として広がっていない。被爆者の活動は国際性を持たなければ」と述べ、市民交流の広がりが鍵になるとの見方を示した。
 被爆者ら70人が参加。同会の柿田富美枝共同代表(68)が「核兵器禁止条約をてこに核廃絶に向かうか、狂気の核軍拡競争に戻るか、分かれ道に立っている」として日本を含む各国に同条約参加を求めるアピールを読み上げ、採択した。英語とロシア語にも訳し、核保有国の在日大使館や日本政府に送る。

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