「海藻知って対馬の海を守ろう」島おこし協働隊員・釜坂さん 磯焼け対策へ標本制作

対馬の海藻標本作りに取り組む釜坂さん=対馬市役所

 長崎県対馬市の島おこし協働隊員、釜坂綾さん(25)が、深刻化する磯焼け対策に生かそうと、島の海藻標本作りに取り組んでいる。生育状況や分類などを記録し、藻場再生に向けた資料として活用。「市民に海藻について知ってもらい、対馬の豊かな海を守る行動につながってほしい」としている。

 釜坂さんは長崎市出身。福山大大学院(広島県)で生命工学を専攻し、藻場などについて研究した。2021年4月、協働隊に着任。対馬市水産課で「海の森再生支援担当」として、対馬沿岸の藻場の回復に向けた業務に取り組んでいる。
 釜坂さんによると、確認されている大型海藻類は、ワカメやカジメなど16種類。藻場が消失する磯焼けは、08年ごろから全島で見られるようになった。海水温上昇や食害魚の増加などが要因とみられている。藻場がなくなれば、海中の酸素が減って水質が悪化するほか、魚介類の食料や産卵場所、すみかがなくなることが懸念される。
 標本は、採取した海藻を真水につけてあく抜きし、厚紙に張り付けて完成。生育状況や採取した日付、場所、学名などを書き添えている。これまでに大小の海藻合わせて90種類以上の標本を作った。
 標本は、磯焼け対策に向けた研究に生かすだけでなく、普及啓発にも活用。対馬市役所本庁舎(厳原町)ロビーに一部を公開しているほか、対馬博物館で展示したり、地元小中学校での環境教育に活用したりすることを計画している。
 釜坂さんは、対馬に生育する海藻標本の網羅を目指す考え。「標本があれば、海藻が対馬から消失しても、復活させるための資料として活用ができる」と話した。

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