県フィルムコミッション ロケ誘致、経済効果に期待

 【論説】映画やドラマのロケを誘致し、撮影を支援する「福井県フィルムコミッション(FC)」が設立された。2024年の北陸新幹線の県内延伸を控え、本県の魅力を発信。市のフィルムコミッションなどと協力しながら経済的効果や観光振興、地域の活性化につなげたい。

 FCはロケ地のほか宿泊、食事などの関連情報、道路や公園などの使用許認可に関する情報を提供したりする非営利組織。1940年代に米国で始まり、日本では2000年ごろ大阪で設立された。自治体などが母体となり、全国には約350団体がある。

 県内には福井、敦賀、勝山、小浜の4市にあるが、県内ロケ全般の窓口を明確にするため、今年3月に県の組織として設立された。新幹線延伸で首都圏からのアクセスがよくなることや、一般的に映画製作には構想から撮影開始まで2年程度かかることもあり、この時期の設立となったという。

 県ブランド課内に事務局を置き、担当の職員(兼務)を配置。ホームページで県立恐竜博物館や一乗谷朝倉氏遺跡復原町並など約170カ所のロケ候補地を写真で紹介している。

 さらに、17年度に創設したロケ経費などの補助制度を拡充。要件を緩和し、映画の場合、ロケの延べ宿泊数や公開規模などにより最大1千万円が支給される。

 こうした補助は「全国でも手厚い方」(同課)だが、ロケ誘致の経済効果は大きい。県外では撮影隊が1カ月滞在し、弁当代やセット費を含め約1億円が使われたケースもある。ヒット作だと放映後もロケ地を巡る観光客が急増するなど波及効果も大きい。

 作品には住民がエキストラとして出演したり、ボランティアとして撮影に協力したりすることもあり、FCはサポーターへの応募も呼び掛けている。ロケは新たな観光資源を生み、地域への愛着を深めるきっかけになる。まちづくりを担う人材の育成や地域コミュニティーの形成にも役立つ。こうした地域活性化の観点からもロケ誘致を目指したい。

 一方、FCは3人以下で活動しているケースが多く、全国的に人手不足が指摘されている。今後、県と市のFCが連携してネットワークを形成し、役割分担を図りながら継続的に活動を展開する仕組みづくりも必要だろう。

 24年のNHK大河ドラマは、本県で少女時代を過ごしたとされる紫式部が主人公の「光る君へ」に決まった。新幹線県内延伸という追い風もあり、関連番組の県内ロケ実現にも期待したい。

© 株式会社福井新聞社