妻を襲った元准教授は妄想性障害 検察側「でも計画準備していた」弁護側は無罪主張「妄想の影響は圧倒的」

さいたま地裁=さいたま市浦和区高砂

 埼玉県さいたま市浦和区で2020年3月、妻を刺して殺害したとして、殺人と銃刀法違反の罪に問われた、住所不定、元文教大准教授で無職の夫(53)の裁判員裁判の論告求刑公判が30日、さいたま地裁(小池健治裁判長)で開かれた。検察側は懲役10年を求刑し、弁護側は心身喪失だったとして無罪を求めた。判決は6月22日。

 論告で検察側は、鑑定医の証言などから夫は「殺人の社会的意味が全く分からないわけではなく、常識的理解が全くないわけではない」と指摘。妄想性障害を患いながらも計画や準備をしていたことなどから「合理的な行動を取っている」と述べ、妄想の影響は大きいが圧倒的とは言えないとした。

 弁護側は、夫の行動が「妄想が入りこんでいるからこその行動だった」と主張。妄想が事件に発展したとし、「妄想の圧倒的な影響があった」と主張した。

 起訴状などによると、20年3月16日午後6時ごろ、さいたま市浦和区の県庁前の路上でさいたま少年鑑別所の職員だった妻=当時(53)=を待ち伏せ、自転車に乗っていた妻を倒して包丁で胸などを複数回突き刺し失血死させたとしている。

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