<南風>老老介護

 最近のニュースで介護している夫を妻が殺害したという悲惨な事件を耳にした。報道された内容から「老老介護による介護疲れ」がすぐに頭に浮かんだ。このようなことがまだ起きていることに、ショックを隠せなかった。

 「老老介護」とは65歳以上の高齢者を65歳以上の高齢者が介護している状態のことを指す。75歳を超えている方同士の場合は「超老老介護」という。年々増加の傾向にあることが国民生活基礎調査が示している。

 「老老介護」は介護している人の体力の低下や、社会とのつながりが減るなどの課題もあり、精神的、身体的なストレスが大きい。そのストレスをうまく伝えられず、また遠慮(子どもたちや他人に迷惑を掛けたくない)や我慢(自分が頑張ればいい、あるいは周囲の目を気にして助けを求められない)をしながら、抱え込んでしまう傾向がある。

 「老老介護」が他人事ではなく、自分事と捉えて、家族と介護が始まったときにどうすれば良いのかを今から考えてほしい。

 私は介護職として20年以上関わってきたが、このような事件を耳にするととてもやるせない思いにさいなまれる。このご夫婦の歩んでこられた人生やこれからのことを思うと胸が詰まる。

 このような事件がなくなるために何ができるだろうか。孤立しないコミュニケーションやコミュニティーや、社会の仕組みも必要だろう。いや、「孤立」しても「孤独」にならない地域、社会づくりをしていく必要がある。

 今の時代にこそ「おせっかい」が必要なのかもしれない。昔は私の周りにも、おせっかいおばさん、おじさんがいて、たくさんの情報を持ち、発信していた。いい意味での「おせっかい」や大きなお世話が地域を救うことになるのかもしれない。

(友寄利津子、NPO法人ライフサポートてだこ代表)

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