佐世保・黒島の有害鳥獣 現状は? イノシシ年間100頭超、シカ初捕獲…

島にかけた箱わなについて説明する猟友会メンバー=佐世保市、黒島町

 長崎県佐世保市の黒島(黒島町)で初めてイノシシが捕獲されてから十数年。少しずつ数を増やしたイノシシは、年間で102頭(昨年度)捕獲されるまで増加した。そうした中、泳いで渡って来たシカが昨年、初めて捕獲された。

その後、目撃情報はないが島で繁殖するのも遠くない話かもしれない。農作物などを食い荒らし有害鳥獣とされるこれらの野生動物。黒島での現状を取材した。

◎イノシシ 年間100頭超 民家にも侵食

 2006年初め、黒島の古里地区の田んぼに、それまで見たことのない動物の足跡が確認された。程なくして島近くの海を泳いでいるイノシシが漁師に目撃され、対策を検討することになった。
 当時、島には猟友会メンバーがいなかったので本土の相浦猟友会に駆除を依頼。来島した同会メンバーは「箱わな」を数個設置した。その後数年はイノシシがわなにかかると連絡を受けた同会メンバーが捕獲のため来島していた。

家の庭に入ってきたイノシシ=佐世保市、黒島町(濱田次義さん提供)

 しかし、農作物被害は年々増加、島内に狩猟免許保有者が必要であるとの声が住民から上がった。そこで島の男性3人が免許を取得。09年に「イノシシ被害防止対策協議会」を立ち上げた。以降、島全体で対策に取り組んでいる。
 現在は主に免許保有者2人と補助員4人の計6人で対策。各所に仕掛けたわなを、毎日見回っている。多い年は年間200頭以上も捕獲した。最近は農作物への食害にとどまらず、民家の庭の植木鉢をひっくり返したり水道パイプを壊したりと、一般家庭の生活にまで侵食してきているという。
 黒島地区コミュニティセンターの山内一成センター長(67)は「空き家はイノシシのねぐらになっているし、家の周りにワイヤメッシュを設置して侵入を防ごうとする人もいる。人口は減っているのにイノシシは増えて困っている」と表情を曇らせる。

◎シカ 海を渡り初捕獲 生息懸念

 昨年10月、黒島に泳いで渡ってきたシカが捕獲された。近年、市の本土部で増えたシカが“安住の地”を求め九十九島の島々に渡っているのが確認されているが、黒島では初めてだった。それ以降は、目撃情報も捕獲もないが、既に黒島で生息していないか懸念されている。
 市内で自然保護活動などに取り組む「ふるさと自然の会」は、2019年から市内でシカの調査に取り組んでいる。川内野善治会長は「ゆっくりではあるが、確実に分布を広げている」と話す。同市鹿町町で増えたシカが市内各地に広がっているとみている。

九十九島の「牧の島」周辺を泳ぐシカ=佐世保市内(2019年、江上勝美さん提供)

 シカは人間が少なく、食べ物が多い場所を探して移動する。海岸が平らで上陸しやすい北九十九島では、食べ物を求め島から島へ渡っていると指摘。ほとんどの島で草などが食べられた痕があり、中には島内で全滅している植物もあるという。
 黒島でシカが確認されたことについて、島の関係者は「既にいたとしても、捕獲して減らしていくしかない」と話す。
 川内野会長は「もし、住み着いていたとしても個体数が少ないだろうから、4、5年は大丈夫だと思うが、その後は分からない」と説明。「イノシシと異なり、シカは毒性があるものも含め全てを食べ尽くす。下草や首が届く範囲の、木の皮も食べて山を駄目にしてしまう。そのため、将来的に土砂崩れなどの災害が起きやすくなる危険が高まる」と指摘する。


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